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チャイコフスキー作曲による3幕のバレエ。M.ペチパが,シャルル・ペローの昔話を台本化し,振り付けた。1890年1月ペテルブルグのマリインスキー劇場で初演。王女(オーロラ)の命名式に招かれなかった悪の精カラボスが王女成長後の死を暗示する。善の精リラは100年の眠りの後,姫は目覚めると予言する。オーロラ姫は,16歳の誕生祝いに4人の王子との踊りの後,変装したカラボスが渡した紡ぎ針を手に刺し眠りに入る。100年後リラの精の導きで王子が現れ,接吻により姫は目を覚ます。王子との華やかな結婚式となり,〈青い鳥〉など童話の主人公たちの踊りがあり,姫と王子のグラン・パ・ド・ドゥで終わる。ペチパの傑作というだけでなく,19世紀後半のバレエ・ロマンティックの代表作といわれる。1922年バレエ・リュッスが《オーロラの結婚》を上演後,単独でもこの幕が行われている。日本では52年小牧バレエ団が全幕初演した。
執筆者:桜井 勤
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ペローの童話集『過ぎし昔の物語ならびに教訓』中の一編。悪い仙女の呪(のろ)いで百年の眠りについた姫が、王子の愛で呪いが解けて眠りから覚め、2人はめでたく結婚(前段)、しかし王子の母は実は食人鬼で、王子と姫との愛児オーロール(暁姫)、ジュール(日の子)を食べようとするが、結局、怪物は退治されて真の幸福が訪れる(後段)。王子や英雄の到来で眠っている姫が目を覚ますテーマは、ヨーロッパ古来の民間伝承に豊富にあり、洞窟(どうくつ)や城の中で長らく眠るという話も古代・中世の伝説に多い。また16世紀イタリアのコント作家バジーレの『ペンタメロン(五日物語)』中の『ソレとルナとタリア』も同一テーマを追っているが、タリア姫の双生児ソレ(日の子)、ルナ(月の子)は、母親の指をしゃぶって彼女を眠りから覚ます。さらに14世紀フランスの物語『ペルセフォレー』にも同じ話がみられる。グリムの『野ばら姫』も、ペローの話の前段とほとんど同じだが、後段の母后=食人鬼の話は削られ、これは別の話として残されている。
[榊原晃三]
『新倉朗子訳『完訳ペロー童話集』(岩波文庫)』
ロシアの作曲家チャイコフスキーのバレエ曲。プロローグと三幕からなる。同名のペロー童話をフセボロジュスキーが脚色、M・プチパの構成台本と振付けによって、1890年ペテルブルグのマリンスキー劇場で初演された。プロローグはオーロラ姫の誕生の命名式。妖精(ようせい)たちが姫を守ることを誓うが、式に招かれなかった魔女カラボスは姫に呪(のろ)いをかける。第一幕は姫の16歳の誕生日の祝宴。各国から求婚のためやってきた王子4人と姫との変型のローズ・アダージョなどが踊られる。カラボスが現れて姫に紡錘を渡し、その紡ぎ針に触れた姫をはじめ一同は百年の眠りにつく。第二幕は百年後。狩にきた王子がリラの精と出会い、深い森に眠っているオーロラ姫を救い出す。第三幕は姫と王子の結婚式。ペロー童話の主人公の踊りなどさまざまな踊りが踊られる。この作品からは、不死性への願望と宮廷バレエ時代の結婚の祝宴の痕跡(こんせき)が鮮やかに読み取られるが、今日でもさまざまな演出で演じられている。
[市川 雅]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…しかし,舞踊の因襲的な技法が自由な音楽表現の束縛となり,一級の作曲家たちはバレエ音楽に創作意欲を示さなかった。パリにおけるドリーブの《コッペリア》(1870)と《シルビア》(1876),モスクワにおけるチャイコフスキーの《白鳥の湖》(1876),ペテルブルグにおける同じ作曲家の《眠れる森の美女》(1890)と《くるみ割り人形》(1892)の成功は,この通念を打開し20世紀のバレエ音楽への道を開いた。 1910年代から20年代にかけて,ディアギレフの主宰する〈バレエ・リュッス〉のために,現代音楽の新しいイズムをもったバレエ音楽が相次いで創造される。…
…独舞と群舞の有機的なつながり,踊りとマイムの交替による劇的展開など,さまざまな新手法を打ちだし,欧州屈指のバレエ団をつくりあげた。彼の作品は《ドン・キホーテ》(1869),《バヤデルカBayaderka》(1877)をはじめ自作だけでも60編を超すが,その作舞法は年とともに深味をまし豊かになり,とくに晩年にはチャイコフスキー,グラズノフの協力のもとに交響楽的バレエ《眠れる森の美女》(1890,曲チャイコフスキー),《白鳥の湖》(1895,イワノフと分担,曲チャイコフスキー),《ライモンダ》(1898,曲グラズノフ)など,近代バレエの頂点をなす不朽の名作をつくりあげた。また《ジゼル》《海賊》《エスメラルダ》など,先人の作品の改訂増補にいどみ,精彩さを加えた傑作として後代に伝えた。…
※「眠れる森の美女」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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