改訂新版 世界大百科事典 「赤ずきん」の意味・わかりやすい解説
赤ずきん (あかずきん)
ヨーロッパで口伝えの昔話で,フランスのC.ペローが〈童話集〉に再話して収めたもの。赤ずきんと呼ばれる娘が母の言いつけで祖母に菓子を持って行く途中,狼に出会う。祖母のところへ行くのだと娘が言うと,狼は先回りして祖母を食べて殺し,祖母になりすます。道草を食っておそく着いた赤ずきんもその狼に食べられる。
ペローの話はここで終わるが,ドイツの《グリム童話》では,このあと,通りかかった狩人が,眠っている狼の腹を切開し,祖母と赤ずきんを救出する。赤ずきんが狼の腹の中へ大きな石を入れておくと,目をさました狼は,腹が重くて倒れて死ぬ。腹の中の石で死ぬモティーフは,《グリム童話》5番〈狼と七匹の子山羊〉の結末にもみられる。
〈赤ずきん〉も〈七匹の子山羊〉も,いったん狼に食べられて,あとで救出されるのだが,この部分は,シャマニズムの通過儀礼としての〈死と再生〉がかすかななごりをとどめるモティーフと考えられる。フランスの最近の研究では〈赤ずきん〉というのはペローの命名とされている。しかしドイツでは,ヘッセン州シュワルム地方に,未婚女性が赤い小さな帽子をかぶる習俗があるところから,この名はその帽子に由来すると説明されている。
執筆者:小澤 俊夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報