ロア(英語表記)Gabrielle Roy

改訂新版 世界大百科事典 「ロア」の意味・わかりやすい解説

ロア
Gabrielle Roy
生没年:1909-83

カナダの小説家。フランス系。第2次大戦下のモントリオールの庶民の哀歓を描いた小説《かりそめの幸福》(1945)と,《銀行員アレクサンドル・シェヌベール》(1955)が彼女の文名を高からしめた。ほかに生地マニトバ州に材をとった短編小説集《鷭(ばん)の巣くう所》(1950),《デシャンボー通り》(1955)や北極カナダを舞台にした小説《秘密の山》(1961),短編小説集《休むことを知らぬ川》(1970)など,いずれも珠玉の作品として評価が高い。彼女のほとんどの作品は英訳され,イギリス系カナダ人にも広い読者層を有する。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ロア」の意味・わかりやすい解説

ロア(Gabrielle Roy)
ろあ
Gabrielle Roy
(1909―1983)

カナダの女流小説家。フランス系。中部カナダ、マニトバ州のウィニペグにあるフランス系カナダ人のコミュニティに生まれる。ウィニペグ、ついでモントリオールで学校の教師をしたのち、ジャーナリズムに入り、パリ滞在。第二次世界大戦後発表された『行きずりの倖(しあわ)せ』Bonheur d'occasion(1945)でフランスの女流文学賞フェミナ賞を獲得した。以後モントリオールを中心に、貧しい都市生活者、適応に苦しむ海外からの移民の生活などを鋭い心理観察と、温かい筆致で描いた作品を次々と発表して、戦後のカナダ文学を代表する作家となった。ほかに『小さな野鴨(のがも)』La Petite Poule d'eau(1950)、マニトバを舞台にした『神秘の山』(1960)、そして『憶(おも)い出の子供たち』Ces Enfants de ma vie(1977)などがある。

西本晃二


ロア(Jules Roy)
ろあ
Jules Roy
(1907―2000)

フランスの小説家。アルジェリア(当時フランスの植民地)で生まれた。初めは軍人になり、かたわら詩と小説を書いたが、インドシナの独立闘争を弾圧するフランス軍隊のなかにいるのを嫌って軍籍を離脱し(1953)、以後は執筆に専念。『アルジェリア戦争』(1960)、『ディエン・ビエン・フー陥落』La Bataille de Dien Bien Phu(1963)など、ヒューマニズムにあふれたルポルタージュや、大作『アルジェリア大壁画』全6巻(1968~75)などがある。年齢を加えても旺盛(おうせい)な文筆活動を継続し、1998年にはその日記の第1巻『引き裂かれた歳月』(1925~1965)が出版された。

鈴木道彦


ロア(Claude Roy)
ろあ
Claude Roy
(1915―1997)

フランスのジャーナリスト、批評家。パリに生まれる。「批評的描写」の総題をもつ批評活動は、古典作品から近代絵画に至る多様な対象を、軽妙な文体で分析し位置づける。業績は、詩、小説、ルポルタージュ、美術論など多数ある。なかでも、右翼に共感を寄せた戦前の青年時代からの蛇行した精神遍歴、多彩な交友関係などを語る『この私』Moi je(1969)をはじめとして全3冊の自伝的エッセイは、一つの時代の生きた証言として注目される。癌(がん)から生還したあと、なお生きることの幸福を『滞在を許されて』(1982)に書いた。

[清水 徹]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ロア」の意味・わかりやすい解説

ロア
Roy, Claude

[生]1915.8.28. パリ
[没]1997.12.13. パリ
フランスの詩人,批評家,小説家。本名 Claude Orland。初めは右翼系の『アクシオン・フランセーズ』紙に拠ったが,L.アラゴンの影響を受けて共産党員となり,抵抗運動に参加。 1956年離党。いきいきとした知性あふれる文体と明快で誠実な態度で,広範な執筆活動を行う。主著は詩集『唯一の詩』 Un seul poème (1954) ,小説『夜は貧者たちのマント』 La Nuit est un manteau des pauvres (48) ,『愛する不幸』 Le Malheur d'aimer (58) ,評論『アラゴン』 Aragon (45) ,自伝的エッセー『私』 Moi je (69) ,『私たち』 Nous (72) 。

ロア
Roy, Jules

[生]1907.10.22. アルジェリア,ロビゴ
[没]2000.6.15. フランス,ベズレー
フランスの小説家。長年空軍に勤務。ヒューマニズムあふれる筆致で戦争を扱った小説がある。『幸福の谷間』La Vallée heureuse(1946)でルノドー賞受賞。ほかに『ディエンビエンフー陥落』La Bataille de Dien Bien Phu(1963),『中国で経験したこと』Le Voyage en Chine(1965),アルジェリアの諸相を描いた 6部作(1968~75)などがある。1958年にはそれまでの作家活動に対して,アカデミー・フランセーズの文学大賞を贈られた。

ロア
Roy, Pierre

[生]1880.8.10. ナント
[没]1950.9.26. ミラノ
フランスの画家。父に絵を学んだのち,パリに出て 1904年から J.ローランスに師事。フォービスムの画家や詩人 G.アポリネールなどの影響を受けながら劇場装飾を手がけていたが,25年シュルレアリスム運動に参加。構築性,幻想性,緻密さを融合した独自な作風の絵画を生んだ。

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世界大百科事典(旧版)内のロアの言及

【スペイン演劇】より

…〈黄金世紀〉の国民演劇の特色は,まず第一に民衆劇であったこと,そして,国王への忠誠,カトリックの信仰,名誉の感情の三つを大きな柱としたことにある。作品は3幕から成り,上演の前に前口上〈ロアloa〉があり,幕間にはエントレメスや踊りが挟まれ,最後は歌や踊りでにぎやかに公演を終わった。作品も役者も劇場も厳しい監督下にあり,官許の劇団と,それ以外の旅回り専門の劇団とがあった。…

※「ロア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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