日本大百科全書(ニッポニカ) 「ホフマン物語」の意味・わかりやすい解説
ホフマン物語
ほふまんものがたり
Les contes d'Hoffmann
フランスの作曲家オッフェンバックのオペラ。プロローグとエピローグをもつ全三幕。E・T・A・ホフマンの小説をもとにしたJ・バルビエとM・カレの台本による。三編の幻想的な小説を、主人公ホフマンが自らの恋物語として紹介するオムニバス形式の作品で、第一幕は『夜景作品集』のなかの「眠りの精」からとられた、自動人形オランピアに恋する男の話。第二幕は『大晦日(おおみそか)の夜の椿事(ちんじ)』のなかの「鏡の影」による、男を破滅させる高級娼婦(しょうふ)ジュリエッタの話、そして第三幕は『セラーピオン朋友(ほうゆう)会員物語集』のなかの「顧問官クレスペル」を原作とする、病床に伏す歌好きの令嬢アントニアの話である。オッフェンバックの音楽は、原作の怪奇的性格を十分に生かしながらも、そこに彼特有の軽妙な味わいを加えたもので、オペラ全体は美しい旋律に富み、とくに第二幕で歌われるバルカロール(舟歌)は「ホフマンの舟歌」としてしばしば単独で歌われるほどに名高い。作曲者の死(1880)で一部が未完となったが、ギローErnest Guiraud(1837―92)によって完成され、1881年パリで初演された。
[三宅幸夫]