ホルモンとは

内科学 第10版 「ホルモンとは」の解説

ホルモンとは(内分泌系の疾患の総論)

(1)ホルモンの定義
 「ホルモン(hormone)」という用語は,Starlingが1905年,「内分泌腺で作られた物質が血流を介して運搬されて,標的臓器を刺激する化学物質」として命名した.すなわち内分泌細胞から分泌されたホルモンが血液中に分泌され,遠隔の標的細胞に運搬されて,その特異的な受容体(レセプター)を介して微量でその作用を発揮する生体内情報伝達系を内分泌系(endocrine system)という.
(2)ホルモンの役割
 内分泌系は,生体が個体の維持,種の保存を行うための細胞間情報伝達システムであり,①生殖,②成長,発達,③内部環境の維持,④エネルギー産生,利用,貯蔵などに作用する.近年の内分泌学研究の進歩により,ある細胞で産生された情報伝達物質が,血流を介さずに分泌された細胞の近傍の細胞あるいは分泌細胞自身に作用する系の重要性が明らかにされ,各々,傍分泌系 (paracrine system,パラクライン),自己分泌系(autocrine system,オートクライン)とよばれている.心血管系細胞から分泌されるNa利尿ペプチドファミリーエンドセリンの発見は,脂肪細胞から分泌されるレプチンアディポネクチンなどのアディポサイトカイン,消化管から分泌されるグレリンなどの発見は,内分泌学のとらえ方をまったく新しいものに導いている.
(3)ホルモンの種類
 ホルモンは古典的および新しい概念のホルモンを含めて,化学構造から少なくとも4つに分類される.すなわち,①蛋白およびペプチドホルモン,②ステロイドホルモン,③アミンまたはアミノ酸ホルモン,④その他プロスタノイドや一酸化窒素などである(表12-1-1). ペプチドホルモンの血中での半減期は数分~10分程度であり,血中濃度は1012~109 Mである.糖蛋白ホルモンは1~4時間の半減期である.カテコールアミンの半減期は1分程度と短い.一方,ステロイドホルモンや甲状腺ホルモンは血中で大部分がホルモン結合蛋白(コルチコステロイド結合グロブリンCBG,性ステロイド結合グロブリンSHBG,サイロキシン結合グロブリンTBGなど)と結合しており,半減期は数時間,血中濃度は109~106 Mである.血管内皮から分泌されるNOの半減期は数秒である.[柴田洋孝・伊藤 裕]
■文献
Melmed S, Polonsky KS, et al: Hormones and hormone action. In: Williams Textbook of Endocrinology, 12th ed, pp3-99, Elsevier Saunders, Philadelphia, 2011. Jameson JL, DeGroot LJ: Principles of endocrinology and hormone signaling. In: Endocrinology, 6th ed, pp3-14, Elsevier, Amsterdam, 2010.

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

四訂版 病院で受ける検査がわかる本 「ホルモンとは」の解説

ホルモンとは

 ホルモンは、内分泌腺細胞から体液中に放出される化学物質で、ほかの臓器の代謝活性を刺激し、促進したり抑制したりする役割をもっています。

 右図に示すように、ホルモンには特定の産生臓器があり、特定の標的臓器だけに作用します。この標的臓器は全身に分布しているため、作用が多様になり、ホルモンの量や作用が多すぎたり、少なすぎたりすると症状は多彩となります。

 不定愁訴と呼ばれるはっきりしない症状の多くは、ホルモン異常である場合が少なくありません。

 ホルモンの特徴的なことは、下図に示すフィードバックシステムと呼ばれる機構により、全身の状態がいつも同じになるように調節されていることです。

 臓器のホルモン産生は脳下垂体で調節されており、臓器でのホルモン分泌が低下した場合は、下垂体からホルモン分泌を促進するホルモン(刺激ホルモン)が分泌され、逆に臓器での分泌が亢進した場合は、これらの刺激ホルモンの分泌が低下して、ホルモンの分泌を抑えるようにしています。

 ホルモンの定量は、ほかの臨床検査と若干異なり、ホルモン量が低値か高値かで、そのホルモンを分泌する臓器の機能低下か亢進かが診断できます。

 本書では、数あるホルモンの中からおもなものについて解説します。

ホルモンのフィードバックシステム


ホルモン産生臓器と分泌ホルモン


出典 法研「四訂版 病院で受ける検査がわかる本」四訂版 病院で受ける検査がわかる本について 情報

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