日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボウズコンニャク」の意味・わかりやすい解説
ボウズコンニャク
ぼうずこんにゃく / 坊主蒟蒻
Indian driftfish
[学] Cubiceps whiteleggii
硬骨魚綱スズキ目エボシダイ科に属する海水魚。北海道以南の太平洋沿岸、新潟県以南の日本海沿岸、東シナ海、台湾、インドネシア、インド、オーストラリアなど西太平洋、インド洋の温帯から熱帯海域に広く分布する。体は楕円(だえん)形で側扁(そくへん)する。吻(ふん)は丸くて短く、吻長は眼径にほとんど等しい。口は小さく、頭のわずかに下方に開く。上顎(じょうがく)のほとんどは眼前骨で覆われて露出しない。上顎の後端は目の前縁にかろうじて達する。上下両顎に小さい歯があり、1列に並ぶ。上顎の中央歯は単尖頭(たんせんとう)(枝分かれしていない)で、下顎歯は3尖頭。口蓋骨(こうがいこつ)に1列の歯、鋤骨(じょこつ)(頭蓋床の最前端にある骨)に小さい歯帯、舌上に1列の歯がある。鱗(うろこ)は小さく、円鱗(えんりん)ではがれやすい。側線鱗は56~63枚。頬(ほお)、喉部(こうぶ)には鱗があるが、吻と頭頂部は無鱗。背びれは胸びれ基底上端の上方から始まり、第1背びれは9~11棘(きょく)で、細長く、倒すと基底部にある溝に収まる。第2背びれは1~2棘18~21軟条。臀(しり)びれは3棘18~20軟条。胸びれは長く、鎌(かま)状で、基底は水平になっており、翼のようにつく。腹びれも長くて、基底部にある溝に収まり、後端は肛門(こうもん)に達する。尾びれは深く二叉(にさ)しているが、上下葉の前半部は重なっている。食道部は膨らんで袋状(食道嚢(のう))となり、内部に多数の食道歯を備える。生鮮時の体は背側面では暗褐色で、腹面ではやや淡い。水深180~500メートルの底層近くにすみ、夜間に中層域に浮上する。おもにクラゲ類を、まれに端脚(たんきゃく)類やエビ・カニ類の幼生を食べる。産卵期は東シナ海では10月以降、鹿児島県沿岸では11月ころに、大陸棚から大陸斜面で産卵すると推測されている。最大体長は約20センチメートル。底引網などで漁獲されるが、漁獲量は少ない。塩焼き、煮つけ、干物などにする。
胸びれが臀びれの起部を大きく越えないことでホソオキメダイC. pauciradiatusに類似するが、ホソオキメダイは体高が低くて、背びれと臀びれの軟条数が17本以下であることなどで本種と区別できる。
[鈴木 清・尼岡邦夫 2023年11月17日]