日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボルノー」の意味・わかりやすい解説
ボルノー
ぼるのー
Otto Friedrich Bollnow
(1903―1991)
ドイツの哲学者、教育思想家。初め物理学、数学を学ぶが、哲学、教育学に転じた。ゲッティンゲン大学、ギーセン大学、マインツ大学を経て、1953年から1970年までチュービンゲン大学正教授。ハイデッガー、ヤスパースの実存哲学とシュプランガー、ミッシュGeorg Misch(1878―1965)、ノールを通じてディルタイの生の哲学の影響を受け、実存哲学の色彩の濃い哲学的人間学を展開する。彼によれば、人間学は、個別的な人間の諸現象から出発し、それらが開示する人間の本質特徴を平等に取り上げ、そこから人間の全体理解へと進む開かれた学であるという。それゆえ、不安、絶望などに対して信頼、希望、安心などが、よりいっそう根本的な生の契機であるとして、実存主義を克服しようと試みた。教育でも、子供の成長は安心感を基底にするとし、さらに教育過程の非連続性や出会いの重要性を指摘し、実存主義的色彩を帯びた修正ないし補足を伝統的教育観に加えた。
[小池英光]