シュプランガー(読み)しゅぷらんがー(英語表記)Eduard Spranger

日本大百科全書(ニッポニカ) 「シュプランガー」の意味・わかりやすい解説

シュプランガー
しゅぷらんがー
Eduard Spranger
(1882―1963)

ドイツの哲学者、心理学者、教育学者。ライプツィヒベルリン、チュービンゲン各大学教授を歴任ヒューマニズム観念論の伝統のもとで恩師ディルタイの哲学に影響を受け、個人の個性のもつ価値と、個性が関係を取り結びまた規定される超個人的な価値連関とを強調した。理論的意味において重要な著作『生の諸形式』Lebensformen(1924)において、宗教学問、経済などの文化領域に対する人間の関係形態の理想的基本類型文化哲学的に分析し、文化におけるさまざまな現象を理解しようとした。さらに「形而上(けいじじょう)学的理解」に基づいて、自然科学的な心理学から区別される精神科学的な心理学を唱えた。『青年心理学Psychologie des Jugendalters(1924)は現代教育学の基本作品の一つであり、この心理学に基礎を置くものである。彼の問題関心がまた現実の問題に向けられているため、さまざまな機会に発せられた具体的な問いに対して立場を表明するなかで多くの著作が残されている。なお1936年(昭和11)にはドイツ政府の文化使節として来日した。

[千田義光]

『シュプランガー著、篠原正瑛訳『たましいの魔術』(1951・岩波書店)』『シュプランガー著、長尾十三二監訳『ドイツ教育史』(1977・明治図書出版)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シュプランガー」の意味・わかりやすい解説

シュプランガー
Spranger, Eduard

[生]1882.6.27. ベルリン近郊グロースリヒターフェルデ
[没]1963.9.17. テュービンゲン
ドイツの哲学者,心理学者,教育学者。ベルリン大学で W.ディルタイ,F.パウルゼンの指導を受け,1911年ライプチヒ,20年ベルリン,46年テュービンゲンの各大学教授。 36年には来日し,各地で講演を行なった。ディルタイの方法論の影響を受けたが,みずからの立場としては「精神科学的心理学」を提唱。また,文化を一文化ではなく,諸文化としてとらえる文化哲学の立場に立ち,主著『生の諸形式』 Lebensformen (1914) では文化に対する人間のかかわり方を考察し,人間の基本的な類型として,理論的人間,経済的人間,美的人間,社会的人間,権力的人間,宗教的人間の6つに区分した。ほかに,ヨーロッパ精神史,教育学ことに大学教育,宗教哲学の分野にも貢献その他著書フンボルト人間性理念』 W. v. Humboldt und die Humanitätsidee (09) ,『了解の心理学』 Zur Psychologie des Verstehens (18) ,『青年心理学』 Psychologie des Jugendalters (24) ,『現代ドイツの教育理想』 Das deutsche Bildungsideal der Gegenwart (28) ,『たましいの魔術』 Die Magie der Seele (47) ,『文化病理学』 Kulturpathologie (47) 。

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