ドイツの哲学者、心理学者、教育学者。ライプツィヒ、ベルリン、チュービンゲン各大学教授を歴任。ヒューマニズムと観念論の伝統のもとで恩師ディルタイの哲学に影響を受け、個人の個性のもつ価値と、個性が関係を取り結びまた規定される超個人的な価値連関とを強調した。理論的意味において重要な著作『生の諸形式』Lebensformen(1924)において、宗教、学問、経済などの文化領域に対する人間の関係形態の理想的基本類型を文化哲学的に分析し、文化におけるさまざまな現象を理解しようとした。さらに「形而上(けいじじょう)学的理解」に基づいて、自然科学的な心理学から区別される精神科学的な心理学を唱えた。『青年心理学』Psychologie des Jugendalters(1924)は現代教育学の基本作品の一つであり、この心理学に基礎を置くものである。彼の問題関心がまた現実の問題に向けられているため、さまざまな機会に発せられた具体的な問いに対して立場を表明するなかで多くの著作が残されている。なお1936年(昭和11)にはドイツ政府の文化使節として来日した。
[千田義光]
『シュプランガー著、篠原正瑛訳『たましいの魔術』(1951・岩波書店)』▽『シュプランガー著、長尾十三二監訳『ドイツ教育史』(1977・明治図書出版)』
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ドイツの文化哲学者,教育学者。ライプチヒ,ベルリン大学の教授を経て,第2次大戦後はチュービンゲン大学教授。師ディルタイにならって〈生の形式〉の分類を試み,理論的,経済的,審美的,社会的,宗教的,権力志向的という人間の類型化を行い,それらに応じた文化領域を定義した。ドイツの歴史主義と〈生の哲学〉の最後の担い手の一人として,人格主義的に理解したヨーロッパの伝統を現代に生かそうとした。戦前ナチスの不興を買ったとき,冷却期間を置くため日本に滞在したこともある。その穏健な伝統主義はドイツの教養主義的な講壇リベラリズムの典型である。主著は《生の諸形式》(1914)ほか。
執筆者:三島 憲一
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…そして文化の諸形態を産み出す基本原理は直観的にのみ把握され比喩的にのみ表現される,と説かれるのである。また哲学者E.シュプランガーは文化有機体説をそのまま容認はしないが,しかもなお文化形態学的思索の必要性を力説している。一方,民族学者L.フロベニウスはより具体的なレベルでの文化所産(弓,矢じりなど)の形態的特質の比較研究,地理的分布から諸民族の文化史の展開過程を明らかにしようとしたが,これはやがてウィーン学派の文化圏説へと展開されていった。…
…性格学が学問として確立したのは類型学からである。その代表的なものとしては,ユング(内向型と外向型),イェンシュE.R.Jaensch(統合型と非統合型),ファーラーG.Pfahler(固執型と流動型),シュプランガー(理論的人間,経済的人間,審美的人間,社会的人間,政治的人間,宗教的人間の6種型),エーワルトG.Ewald(反応類型),クレッチマー(体質学的類型)などがあげられる。また精神病質人格に関しては,クレペリンが主として心理学的特性と社会学的関係から神経質,興奮者,軽佻者,ひねくれ者,虚言欺瞞者,反社会者,好争者,衝動者に分けており,K.シュナイダーは主として臨床経験にもとづいて性格異常(精神病質)を〈自分自身が悩むもの〉と〈社会が悩まされるもの〉に分け10類型(発揚者,抑鬱者,自信欠乏者,熱狂者,顕示者,気分変動者,爆発者,情性欠如者,意志欠如者,無力者)を列挙している。…
…〈自然をわれわれは説明するが,精神生活はこれを了解する〉という言葉もあるように,心的構造は了解によって生きた全体関連が記述・分析されるとし,どちらかといえば哲学的傾向が強い。このディルタイの了解が直接的な心的連関の把握であったのに対して,その後彼の構想を発展させた弟子であるE.シュプランガーは,さらに心的連関を客観的な意味連関,価値連関に求め,真の了解には単なる主観的な追体験によるだけでなく,個人を超えた心的連関に対する知識が必要であるとし,これを〈精神科学的心理学〉とよんだ。【武正 建一】。…
※「シュプランガー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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