日本大百科全書(ニッポニカ) 「ポケットゴーファー」の意味・わかりやすい解説
ポケットゴーファー
ぽけっとごーふぁー
pocket gopher
哺乳(ほにゅう)綱齧歯(げっし)目ホリネズミ科に属する動物の総称。この科Geomyidaeの仲間は地下生活に適応し、ホリネズミ(掘鼠)ともよばれる。約9属30種がカナダ南部、アメリカ合衆国西部から中央アメリカまでの草原、牧草地、開けた森林、砂漠に生息する。大きさは頭胴長9~30センチメートル、クマネズミ大からマスクラット大まで種によってさまざまである。頑丈な胴体、短い四肢、穴掘りに適した強力な前足とつめ、小さな目と耳など、地中生活に適した体をもつ。顔の後方から肩にかけて大きな頬(ほお)袋を備えている。
地中に広い範囲にわたりトンネル網を掘り、単独ですむ。トンネルは地表近くに掘られる食物探索用のものと、深い所に掘られる居住用の巣穴および貯蔵庫などからなる。地表には掘り出された砂分の多い土の塚が並び、モグラ塚と混同されることがある。おもに早朝と夕方活動し、根、塊茎、種子、草などを食べる。めったに地表には出ないが、ときどき巣穴から体を乗り出して、地表の植物をとる。体中に触毛を備えているため、触覚に優れている。とくに尾の触毛はトンネル内を後ずさりで動く際に役だつ。1産2~6子。天敵はワシ、フクロウ、アナグマなどである。トンネル掘りによって庭園や果樹園に被害を与えるが、一方では根や塊茎を分散させて植物の分布を広める働きもあるといわれる。
[今泉吉晴]