アナグマ(読み)あなぐま(英語表記)badger

翻訳|badger

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アナグマ」の意味・わかりやすい解説

アナグマ
あなぐま /
badger
[学] Meles meles

哺乳(ほにゅう)綱食肉目イタチ科の動物。ユーラシア北部から中部に広く分布し、日本では本州、四国、九州にいるが、北海道、対馬(つしま)、壱岐(いき)、南西諸島などには自然分布していない。低地からかなり高地までの森林にすむ。ササグマ、アナホリマミなど異名が多く、タヌキと混称されて、マミ、ムジナなどとよばれたり地方によってあいまいな使い分けをされたりしている。体長45~90センチメートル、尾長12~20センチメートル。ずんぐりした体格で、四肢は短くて太い。毛色は淡褐色から褐色。タヌキに似ているが、尾が太く短いこと、つめが長く強いこと、耳が小さく、吻(ふん)が長いことなど、外観からも区別できる。肛門腺(こうもんせん)をもつ。トンネルを自分で掘ってすみ、冬ごもりをすることもある。トンネルはかなり長く、数頭から十数頭が共有するのが、「同じ穴のムジナ」の由来である。昼はこのトンネルで眠り、夜間に出て活動する。雑食性で、昆虫、カエル、ヘビミミズ、小鳥、ネズミなど動物質のもののほか、植物の根、果実、キノコなども食べる。交尾期は7~9月、出産は2~5月で、雌親の体内で受精卵発育を一時停止する妊娠遅延があるとされている。1産1子から数子。子は2か月ほどトンネルの中で育てられたのち、しだいに雌親に連れられて出歩き始め、秋には独立することもできる。寿命は12~15年。

 各国で狩猟対象となっており、ダックスフントはそのためにつくりだされた猟犬である(ドイツ語でダックスはアナグマ、フントはイヌの意)。日本では毎猟期に2000頭ほど捕獲されるが、鹿児島、島根、新潟県などに多い。気が荒く猟犬を逆襲するので、わなや、トンネルからいぶり出す方法がとられる。毛の質がよくないので、毛皮用にはあまり用いられず、髭(ひげ)そり用のブラシや毛筆に利用される。冬季の肉はかなり美味で、いわゆる「たぬき汁」として賞味される。

[朝日 稔]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「アナグマ」の意味・わかりやすい解説

アナグマ
Meles meles; Eurasian badger

食肉目イタチ科。体長 44~100cm,尾長 12~19cm。体は黒褐色で白の霜降り状。頭部は平たく,耳と眼は小さく,暗色の過眼線がある。夜行性で,地中に穴を掘って巣をつくる。穴はきわめて深く,地下 3m以上もあり,数個の出入口がある。穴や廃坑などで,11月~3月頃まで冬眠する。モグラやノネズミを主食とするが,植物質も食べる。ヨーロッパ,アジアに分布し,森林や耕作地に近い低木林などに生息する。

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