化学辞典 第2版 「ポジトロニウム化学」の解説
ポジトロニウム化学
ポジトロニウムカガク
positronium chemistry
M. Deutschによってポジトロニウムが実験的に確認(1951年)されて以後,ポジトロニウムおよび陽電子の物質中での化学的挙動,それを利用しての系の電子状態の推察などの研究がポジトロニウム化学として発展してきている.実験的には普通 23Na または 64Cu を陽電子源として用いている.陽電子は試料中で減速され,一部はポジトロニウムを形成し,最後に電子と反応して消滅する.その際放出される光子の個数,エネルギー分布,光子間の角度相関,ポジトロニウムの寿命測定などから次のような事柄が調べられている.気相では各種気体についてのポジトロニウム生成の割合,電子捕そく剤の効果,電場や磁場の影響などが詳しく研究されている.ポジトロニウムは化学的にもっとも簡単な遊離基とも考えられるので,遊離基捕そく剤との反応は重要な問題として追究されている.液相ではピックオフ過程,ポジトロニウムの付加反応,酸化剤との反応,常磁性化学種の効果などが調べられている.固相では,ポジトロニウムの相対的生成量と分子性結晶の密度との関係,金属中での陽電子消滅における内殻電子,伝導電子のそれぞれの寄与する割合,などが研究されている.[別用語参照]電子対消滅
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報