デジタル大辞泉 「光子」の意味・読み・例文・類語
こう‐し〔クワウ‐〕【光子】
[類語]粒子・分子・原子・原子核・原子団・アトム・イオン・素粒子・電子・陰電子・陽電子・陽子・中間子・中性子・エレクトロン・プロトン・ニュートロン・ニュートリノ
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光量子ともいう.M. Planckの量子の考えを光に適用した概念.1905年,A. Einstein(アインシュタイン)が光電効果に関するいろいろな実験事実を説明するためにはじめて導入した.すなわち,振動数νの光のエネルギーは連続的な任意の値をとるのではなく,hをプランク定数として,hνという限られた値,つまり,エネルギー量子をもち,光の吸収に際してはそのエネルギー全部が1個の電子に与えられると考える.いま,金属のなかの電子が,その表面から遊離されるのに必要な仕事関数をWとするとき,hν > Wのときのみ電子が放出され,その運動のエネルギーの最大値は
mv 2/2 = hν - W
である.この考え方により光電効果の実験事実は容易に説明でき,ここに導入された光の量子を光量子(light quantum)または単に光子という.のちにN. Bohr(ボーア)(1913年)は,水素原子スペクトルの理論においてこの光量子の概念を取り入れた.すなわち,原子から放出される光の光量子エネルギーは,原子の二つの状態の間の遷移に際して放出され,状態のエネルギー差 Ei - Ef と
hν = Ei - Ef
の関係にあると考えた.さらにA.H. Compton(1922年)は,コンプトン効果の発見に際して光量子エネルギーhνのX線が
hν/c (cは光速度)
の運動量をもっていることを示して光に粒子性があることを,したがって光量子の概念を確固たるものとした.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
素粒子の一つで、光の場の粒子。光は電磁波としてよく知られているが、量子論に従えば粒子の性質もあわせもっていることになる。プランクの量子仮説によると、エネルギーはすべて不連続で有限な値を単位とした量子として存在する。物質が光を放出したり吸収したりするのは連続的な電磁波としてではなく、1個の量子が振動数νに比例するhν(hはプランク定数)のエネルギーの量子としてその過程に関与する。振動数νの光が伝播(でんぱ)するというのは、エネルギーhνの粒子すなわち光量子が飛んでいくのと同じで、その進行方向にhν/c(cは真空中の光速度)の運動量をもっている。これをアインシュタインの光量子仮説という。光量子を他の電子、陽子、中性子などと同じように素粒子と考える立場から光子またはフォトンとよぶ。
光を光量子として考えてよいことは光電効果やコンプトン効果によって実証された。すなわち光量子1個と電子との衝突と考えることによって説明される。光量子説によれば、光量子のエネルギーはその振動数に比例するから、振動数の高い光ほど、いいかえれば波長の短い光ほど粒子性は顕著になる。そして金属のような物質に当てると、そこからエネルギーの高い電子が飛び出してくる(光電効果)。波長が長いと1個当りのエネルギーが小さく、電子は放出されない。したがって光量子を1個ずつ測定することは不可能になる。光量子のエネルギーが小さいと、同時にたくさんこなければ観測にかからない。このような場合は事実上、電磁波を連続的な波として取り扱ってよい。光の波動性と粒子性は量子力学によって矛盾なく理解される。場の量子論では種々の場を量子化することによってその場に伴う粒子の性質を導くことができるが、光子はマクスウェルの方程式に従う電磁場を量子化して得られる素粒子である。そしてスピン1(単位はh/2π)でボース‐アインシュタイン統計に従う。
[村岡光男]
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(尾関章 朝日新聞記者 / 2007年)
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…すなわち光のエネルギーはhνというひとかたまりの大きさでやり取りされる。最低のhνのエネルギーをもつ光の状態は光子(または光量子といい,粒子として見た光のこと)が1個ある状態であって,振動数νの光の一般の状態というのは光子が何個かある状態に当たる。単位体積中に光子がn個あるとすると,上の古典電磁気学の光のエネルギーとの関係は,=1/2ε0E02=nhνとなる。…
…アインシュタインは,光は波としての性質のほかに粒子としての性格も合わせもっていると考えた。すなわち振動数νの光は,エネルギーがhνである粒子(光子,またはフォトンという)としてふるまい,その強度は光子の数に比例するという仮説を立てた。ここで定数hは,これより少し前に黒体放射スペクトルを説明するのにM.K.E.L.プランクが導入したプランク定数に等しいとアインシュタインは考えた。…
…これらのいずれの相互作用もゲージ粒子と呼ばれるスピン1(重力相互作用の場合はスピン2)の粒子によって媒介されると考えられている。それぞれのゲージ粒子は,重力の場合はグラビトン(重力子),電磁力はフォトン(光子),弱い力はZ粒子(Zボソン)およびW粒子(Wボソン),強い力はグルオンであるが,このうちグラビトンについてはまだ粒子として発見されているわけではなく,またグルオンは理論的にふつうの状態では独立した粒子として観測されることはないと予想される。さらに上記の4相互作用のほかにヒッグス粒子と呼ばれるスピン0の基本粒子によって媒介される相互作用が存在する可能性があり,ゲージ粒子も上記の4種類のほかにいくつか存在する可能性もある。…
…このように物理学が対象とした万物が原子からなり,その原子がすべてこの3種類の小さな粒子(陽子,中性子,電子)でできているとすれば,これらの小さな粒子こそ,もっとも基本的なものであり,このためこれらの粒子は自然を構成する素元的な粒子という意味で〈素粒子〉と呼ばれるに至ったのである。第2次世界大戦前までに,この3種類の粒子のほかにも,光子(フォトン),中性微子(ニュートリノ),電子の反粒子である陽電子などが素粒子の仲間に加えられ,素粒子の種類も増えていったのであるが,素粒子の存在が明らかになったことでミクロの世界の探究は一段落し,素粒子がミクロの世界の主役となった。 第2次大戦後は宇宙線研究の進歩や加速器の発達もあって続々と新しい素粒子が発見され,現在ではその数は何百にも達している。…
…量子化された場は,量子と呼ばれる粒子の集団と同等であることが示される。例えば電磁場を量子化すればフォトン(光子)という量子の集団となる。一方,質点の量子力学(例えば電子の理論)では,状態はシュレーディンガーの波動ψ(x,t)で表され,これも場である。…
…現在では光速度の値として, c0=2.99792458(1.2)×108m/sが得られているが((1.2)は下端の桁の誤差),これは一つのレーザーの発する光の波長λ0と振動数νとを測定し,c0=λ0νなる関係を使って求められたものである。 さて,光は波動であるが,その振動数をν,真空中の波長をλ0としたとき,物質との相互作用の際に,E=hνのエネルギーと,向きが光の進行方向で大きさがp=h/λ0の運動量をもつ粒子としてふるまい(hはプランク定数),この粒子をフォトン(光子)と呼ぶ。
【波動としての光】
光学の歴史は古く,古代ギリシアのユークリッド(エウクレイデス)は光が直進することや反射の法則について記述を残しているが,光学が近代的学問としての装いを整えるようになるのはさまざまな光学器械が登場する16世紀以降のことであり,また,これに伴って,光の本性をめぐっての論争も活発化する。…
…光子,光量子ともいう。物質は光(電磁波)をエネルギーの塊として吸収し,あるいは放出する。…
…だからといって電子が分解して空間に拡散してしまったわけではなく,電子の位置を観測すれば電子は(かけらではなく,まるまる)1点に見いだされることになり,ここに粒子性が現れるのである。また光は,波動のようにふるまって回折したり干渉したりもするが,たとえば電子に衝突する場合には一定のエネルギーと運動量をもったかたまり(光子,フォトン)の姿で現れる。原子が光をだす場合にも,光はじわじわとにじみ出るのではなくエネルギーのかたまりとして瞬間的に出るのである。…
※「光子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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