宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の光の振動の向き(偏光)の観測結果のみに基づいて、重力レンズ効果による偏光パターンを測定することを目的とする実験プロジェクト。これにより、初期宇宙の誕生のようすや現在の宇宙の大規模構造の解明が期待されている。実験グループは大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK)、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構(Kavli IPMU)、カリフォルニア大学バークリー校、同サン・ディエゴ校などの研究者で構成される。インフレーション仮説(宇宙がビッグ・バン以前に急激な加速膨張=インフレーションをおこしたとする説)によると、インフレーションの際に時空が振動することで生じた波である「原始重力波」により、大きな渦の偏光Bモードができたと予想される。これをとらえるために、大角度スケール観測が実施されているが、まだ結論は出ていない。ポーラーベア実験プロジェクトでは、この偏光Bモードに重力レンズを通り抜けた効果が重なった小さな渦をみつける小角度スケール観測を行った。2012年からチリのアタカマ高地に建設された直径3.5メートルの主鏡からなる望遠鏡を用いて、宇宙マイクロ波背景放射の偏光を精密に測定して、99.999%以上の確率で、偏光Bモードの存在をみつけた。より詳細な観測から、宇宙全体に存在するニュートリノの質量の総和を測定できる可能性もある。
[編集部 2023年12月14日]
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