宇宙的な規模で新しい文明の基盤を創造し,地球の環境を保全するための総合的な方法論。20世紀末,人類は人口爆発,食糧不足,資源・エネルギー枯渇,環境汚染,砂漠化,海面上昇など,全地球的な規模の危機に直面している。その解決策として省エネルギー政策が各国によって採用されているが,さらにローマ・クラブの提言《成長の限界》を受けて経済成長の低速化を主張する動きもある。しかし,技術の進歩による宇宙開発や海洋開発の発展は,新たな資源・エネルギーを,宇宙,海洋,極地などの極限環境から獲得することを可能にし始めた。たとえば,希少金属は,陸地に限らず,海底からも,月,巨大隕石,小惑星からも採掘できるし,電力については,太陽発電衛星や月面発電所から地球に送電する技術的基盤も成立している。このような巨大技術プロジェクトを実現するためには,環境への影響測定,社会的アセスメント,経済効果の予測,資金調達,リスク保障,法律改正,政治的意思決定など,官民の協調,学際的・業際的・国際的な協力が必要となる。これらの諸問題を総合的に処理するためには,さまざまなプロジェクトを相互に比較・評価し,資源配分の優先順位を決定する基準が立てられねばならない。また,個別のプロジェクトについて,企画立案から,事業化の可能性の調査,設計,資金・資材の調達,要員の動員・組織,工程管理,実行と運営にいたるまで,一貫した管理システムが不可欠となる。そのような評価基準と管理システムをマクロに実現する総合科学が,1970年代後半,アメリカにおいて,マクロエンジニアリングとして成立するにいたった。提唱者は,マサチューセッツ工科大学のシステム・ダイナミクス学科運営委員長F.P.デービッドソンである。その著《マクロ》(1983)は,ピラミッドやスエズ運河,オランダの干拓など,歴史上の巨大プロジェクトから共通の方法論を導き出し,宇宙開発,海上都市,新交通システム,遷都計画などの未来プロジェクトに役だつガイドラインを提示している。デービッドソンの創立したアメリカマクロエンジニアリング協会に呼応して,イギリス巨大プロジェクト協議会,日本マクロエンジニアリング協議会が組織され,国際協力も盛んになってきた。日本では,世界公共投資基金計画,日本プロジェクト産業協議会,海洋情報都市開発研究会があり,日本マクロエンジニアリング学会によるマクロ・データベースの構築作業も開始された。
執筆者:中川 学
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
… 一方,呼び方はどうあれ,自然の総合的開発を必要とした条件,つまり耕地の不足や水資源の確保,交通の利便といった問題は解消されたわけでなく,それを可能にする科学技術の条件もあり,現実には国土総合開発,河川総合開発あるいは列島改造などの名目で,ある種の〈自然改造〉は今でも多くの国で活発に進められている。近年では,〈自然改造〉の名に相当するような大規模な事業計画に対して〈マクロ・エンジニアリングmacro‐engineering〉の語が用いられることが多い。【奥山 修平】。…
… 一方,呼び方はどうあれ,自然の総合的開発を必要とした条件,つまり耕地の不足や水資源の確保,交通の利便といった問題は解消されたわけでなく,それを可能にする科学技術の条件もあり,現実には国土総合開発,河川総合開発あるいは列島改造などの名目で,ある種の〈自然改造〉は今でも多くの国で活発に進められている。近年では,〈自然改造〉の名に相当するような大規模な事業計画に対して〈マクロ・エンジニアリングmacro‐engineering〉の語が用いられることが多い。【奥山 修平】。…
※「マクロエンジニアリング」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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