日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
まち・ひと・しごと創生法
まちひとしごとそうせいほう
人口減少・高齢化や東京圏の一極集中に歯止めをかけ、地方を活性化するための法律。第二次安倍晋三(あべしんぞう)政権が掲げた地方創生を実現する法律の一つとして2014年(平成26)11月に施行された(平成26年法律第136号)。「50年後に1億人程度の人口を維持する」「2020年度までに東京圏への人口流入と流出を均衡させる」などの目標を達成するため、夢や希望をもち潤いのある豊かな生活を安心して営むことができる地域社会(まち)、個性豊かで多様な人材(ひと)、魅力ある多様な就業の機会(しごと)の三つの創出を一体的に進めることを打ち出した。まち・ひと・しごと創生のための政府、自治体の責務を明記し、政府内に司令塔としてまち・ひと・しごと創生本部(本部長は内閣総理大臣)と地方創生担当大臣(まち・ひと・しごと創生本部副本部長)を設置。2015年度に、全国の都道府県と市区町村に、人口の将来見通しに基づき、地方再生のための長期ビジョンと向こう5年間の戦略「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の策定を求めた。各地域が特長ある総合戦略を、産官学のほか金融機関、労働団体、言論機関、一般市民も加わって策定し、重要業績評価指標(KPI)を設けて効果を検証することで実効性のある地方創生に取り組む。結婚・出産・子育て支援策、高齢化対策、地場産業活性化策、日本版DMO(観光地域づくり法人)による地域観光振興策、コンパクトシティや地域交通網の整備策、地域での環境・IT戦略などがつくられ、政府は改正地域再生法に基づく地方創生推進交付金やまち・ひと・しごと創生事業費などで補助し、ふるさと納税制度を拡充して、地域独自策を後押しした。ただ人口減や一極集中に歯止めをかけるのは容易ではなく、2019年(令和1)には、東京圏への人口流入と流出の均衡目標を2024年に延期した。
[矢野 武 2021年2月17日]