ふるさと納税(読み)ふるさとのうぜい

知恵蔵の解説

個人住民税を納税義務者が住所とする地方自治体に納税することに代えて、その額の一部を別の自治体寄付する制度。2008年から始まった。寄付金額を申告すれば、それに基づいて翌年度の住民税の控除が受けられる。正式には住民税の寄附金税額控除のうちの「都道府県・市町村に対する寄附金」となるが、これを利用すれば、ふるさとなどの財政に寄与でき、事実上その自治体に納税したようになることから「ふるさと納税」と呼ばれている。なお、確定申告を行うと当年度の所得税からの控除(還付)も受けられる。また、これとは別に16年から4年間について、企業が自治体に寄付することで損金算入による軽減に加えて税額控除も受けられる「地方創生応援税制」があり、これを「企業版ふるさと納税」と呼ぶ。
ふるさと納税が制度化された背景には、00年代の小泉純一郎内閣による「聖域なき構造改革」がある。その中で中央から地方へと称して、国と地方の「三位一体の改革」なるものが提唱された。(1)国から地方への補助金の削減、(2)地方交付税交付金の削減、(3)国から地方への税源移譲の三つを行うことで、地方分権と財政再建を進めるというものだった。しかし、東京都などとは異なり、地方交付税交付金に多くを頼ってきた地方公共団体は財源不足に陥り財政が悪化した。「ふるさと納税」は、こうした都市と地方の税収格差是正を目的として検討された。08年の税制改革により制度化されたが、発足後数年間は件数10万件、寄付金額100億円に満たなかった。15年に制度改革が行われ、納税枠が約2割に倍増すると共に、条件を満たせば確定申告を行う必要なく住民税の減免が受けられるワンストップ特例制度が創設された。このため利用が急増、同年は件数700万件、金額1600億円を超え、共に前年度より約4倍増となった。また、豪華な返礼品が話題になったり、インターネットで寄付の申し込みができる仲介サイト(民間)が複数登場して宣伝したりといったことで衆目を集めた。こうして、17年度には1730万件、3650億円(18年度控除額2450億円、適用296万人)に迫るまでになった。総務省はふるさと納税の意義として、(1)寄付先を選択することで、その使われ方を考えるきっかけになる、(2)お世話になった地域、応援したい地域の力になれる、(3)自治体が取り組みをアピールすることで、自治体間の競争が進み、地域のあり方をあらためて考えるきっかけになる、の三つを掲げる。自治体が受け取る寄付は税収増ではなく、他の自治体の税収が移動したものに過ぎないが、受け取る自治体にとっては増収となる。このため、豪華な返礼品で競って寄付を促す自治体も出てきた。17年には、1万円の寄付に平均4000円もの返礼品が送られているとして、これを3000円以下に抑えるよう総務省が通知を出した。しかし、以降も返礼割合が3割を超える自治体は多数に上り、地場産品以外の商品や換金性の高いギフト券などを返礼品として付与するものも後を絶たなかった。こうしたことから、19年3月、返礼品を調達費が寄付額の3割以下の地場産品に限定し、これを逸脱する自治体は制度の対象外とする改正地方税法が可決、成立した。

(金谷俊秀  ライター / 2019年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

百科事典マイペディアの解説

日本国内において任意の自治体に寄付すること。また,寄付した額に応じて所得税と個人住民税から一定の控除が受けれる寄付金控除制度をいう。日本では進学就職により,都市部に人口が集中する傾向がある。これにより都市部の自治体は多くの税収を得るが,地方自治体は税収を得られないといった現象が起こっている。この格差を是正するため,自らの意志で納税できる制度があっても良いのではないかという議論から始まった。ふるさととは,生まれ育った場所と捉えられがちであるが,お世話になった地方への恩返しや,応援したい地方など,各人の価値観により選んで寄付することが可能である。自治体によっては寄付金の使われる事業を選択することもできるため,これに賛同する寄付者もいる。寄付者の所得などに応じて寄付金の一部が控除対象として戻ってくるため,寄付者は小さな負担で寄付をすることが可能である。各自治体では寄付金額に応じて,その土地の名産品などを特典として設けることで,寄付者の拡大を図っている。近年これが過熱化し,寄付者にとってより良い特典を得るための制度の傾向が強くなり,税収が大きく減った自治体も見られている。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

知恵蔵miniの解説

納税者が応援したい自治体を選んで寄附をすると、所定の自己負担額を除いた金額から年収などに応じて所得税・住民税の控除が受けられる制度。納税者側のメリットだけでなく、地方間の税収格差を是正する効果もあるとされる。2008年度より導入され、特産品や宿泊券などの返礼品を贈る自治体の増加に伴い、広く普及した。しかし、自治体間の返礼品競争が過熱して高額な商品や地場産品以外の商品、換金性の高いギフト券などを返礼品とするケースが増え、問題視されるようになった。総務省の是正要請でも改善されなかったことから、19年6月1日、返礼品を寄付額の3割以下の地場産品に限定する新制度が導入された。

(2019-6-4)

出典 朝日新聞出版知恵蔵miniについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

ふるさとや応援したい自治体へ寄付をした個人や法人の納税額を軽減する制度。公益にかなう寄付をした納税者の税額を減らす寄付税制の一種である。都市と地方の税収格差の是正が目的で、欧米に比べて遅れぎみの寄付文化を醸成する役割も期待されている。2004年(平成16)に長野県泰阜(やすおか)村が導入した寄付条例(泰阜村ふるさと思いやり基金条例)が前身で、改正地方税法が施行された2008年度から個人向け制度が始まった。自分のふるさとを応援するという趣旨からふるさと納税とよばれるが、全国どの自治体へも寄付できる。個人は寄付額から2000円を差し引いた額について、年収などに応じて限度額まで個人住民税や所得税から控除される。寄付先が5自治体までなら確定申告は不要である。個人は寄付額の30%以下の地場産品を返礼品として受け取ることができ、税の使い道を指定することも可能。2016年から企業版ふるさと納税制度(地方創生応援税制)が始まり、企業は自治体の進める地方創生事業(内閣府が認定)に寄付すると全額損金算入され、寄付額の最大6割分(2020年から5年間は最大9割分)の法人税や法人住民税が軽減される。

 返礼品や控除制度が人気をよび、導入当初のふるさと納税額は年81億円であったが、ピークの2018年度(平成30)に5127億円に増え、寄付件数は2300万件を超えた。自治体の特典競争が過熱したほか、地場産品と関係ない換金性の高い返礼品が横行し、納税額の多くが返礼品購入に消え、地方財政に寄与しない例も出てきた。都市部中心に住民税控除額は2018年度に2447億円に達し、ふるさと納税が受益者負担原則に反すると批判された。このため政府は2019年(平成31)3月に地方税法を改正し、2019年(令和1)6月から返礼品を「寄付額の30%以下の地場産品」に規制し、従わない泉佐野(いずみさの)市(大阪)、高野(こうや)町(和歌山)、小山(おやま)町(静岡)、みやき町(佐賀)の4市町を制度から除外した。これに対し泉佐野市が2019年、除外取消訴訟を起こしたが、大阪高等裁判所は2020年、請求を棄却、しかし同年最高裁判所は大阪高裁判決を棄却し泉佐野市の逆転勝訴となった。

[矢野 武 2020年8月20日]

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