ふるさと納税(読み)ふるさとのうぜい

共同通信ニュース用語解説 「ふるさと納税」の解説

ふるさと納税

生まれ故郷などの自治体寄付すると、自己負担分の2千円を除いた額が住民税所得税から差し引かれる仕組み。控除額の上限は所得や世帯構成などに応じて変わる。制度が始まった2008年度の寄付総額は81億円だったが、寄付上限の引き上げなどで人気が集まり、23年度は1兆1175億円に上った。豪華な返礼品を呼び水とした自治体の寄付獲得競争過熱したため、政府は返礼品を「寄付額の30%以下の地場産品」に限定している。

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知恵蔵 「ふるさと納税」の解説

ふるさと納税

個人住民税を納税義務者が住所とする地方自治体に納税することに代えて、その額の一部を別の自治体に寄付する制度。2008年から始まった。寄付金額を申告すれば、それに基づいて翌年度の住民税の控除が受けられる。正式には住民税の寄附金税額控除のうちの「都道府県・市町村に対する寄附金」となるが、これを利用すれば、ふるさとなどの財政に寄与でき、事実上その自治体に納税したようになることから「ふるさと納税」と呼ばれている。なお、確定申告を行うと当年度の所得税からの控除(還付)も受けられる。また、これとは別に16年から4年間について、企業が自治体に寄付することで損金算入による軽減に加えて税額控除も受けられる「地方創生応援税制」があり、これを「企業版ふるさと納税」と呼ぶ。
ふるさと納税が制度化された背景には、00年代の小泉純一郎内閣による「聖域なき構造改革」がある。その中で中央から地方へと称して、国と地方の「三位一体の改革」なるものが提唱された。(1)国から地方への補助金の削減、(2)地方交付税交付金の削減、(3)国から地方への税源移譲の三つを行うことで、地方分権財政再建を進めるというものだった。しかし、東京都などとは異なり、地方交付税交付金に多くを頼ってきた地方公共団体は財源不足に陥り財政が悪化した。「ふるさと納税」は、こうした都市と地方の税収の格差是正を目的として検討された。08年の税制改革により制度化されたが、発足後数年間は件数10万件、寄付金額100億円に満たなかった。15年に制度改革が行われ、納税枠が約2割に倍増すると共に、条件を満たせば確定申告を行う必要なく住民税の減免が受けられるワンストップ特例制度が創設された。このため利用が急増、同年は件数700万件、金額1600億円を超え、共に前年度より約4倍増となった。また、豪華な返礼品が話題になったり、インターネットで寄付の申し込みができる仲介サイト(民間)が複数登場して宣伝したりといったことで衆目を集めた。こうして、17年度には1730万件、3650億円(18年度控除額2450億円、適用296万人)に迫るまでになった。総務省はふるさと納税の意義として、(1)寄付先を選択することで、その使われ方を考えるきっかけになる、(2)お世話になった地域、応援したい地域の力になれる、(3)自治体が取り組みをアピールすることで、自治体間の競争が進み、地域のあり方をあらためて考えるきっかけになる、の三つを掲げる。自治体が受け取る寄付は税収増ではなく、他の自治体の税収が移動したものに過ぎないが、受け取る自治体にとっては増収となる。このため、豪華な返礼品で競って寄付を促す自治体も出てきた。17年には、1万円の寄付に平均4000円もの返礼品が送られているとして、これを3000円以下に抑えるよう総務省が通知を出した。しかし、以降も返礼割合が3割を超える自治体は多数に上り、地場産品以外の商品や換金性の高いギフト券などを返礼品として付与するものも後を絶たなかった。こうしたことから、19年3月、返礼品を調達費が寄付額の3割以下の地場産品に限定し、これを逸脱する自治体は制度の対象外とする改正地方税法が可決、成立した。

(金谷俊秀  ライター / 2019年)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ふるさと納税」の意味・わかりやすい解説

ふるさと納税
ふるさとのうぜい

ふるさとや応援したい自治体へ寄付をした個人や法人の納税額を軽減する制度。都市と地方の税収格差の是正や地域振興が目的で、寄付文化を醸成するねらいもある。ふるさとを応援するとの趣旨からふるさと納税とよばれるが、総務省指定の自治体であれば全国どこへでも寄付できる。地方税法に基づき、個人向けが2008年度(平成20)に、企業向けは2016年度に始まった。個人向けは、寄付額のうち2000円を超えた額を、個人住民税や所得税から控除(年収などによる上限額あり)できるうえ、返礼品として地場産品を受け取ることが可能。企業向けは地方創生応援税制ともよばれ、自治体の地方創生事業(内閣府が認定)に寄付すると、寄付額の約3割が損金算入、最大6割が税額控除の対象となる。公益にかなう寄付をした納税者の税額を減らす寄付税制の一種である。

 長野県泰阜(やすおか)村が2004年に導入した寄付条例が前身。返礼品や控除制度が人気をよび、確定申告が不要なワンストップ特例(寄付先は五つまで)の導入もあって、初年度81億円だったふるさと納税に基づく寄付額は2022年度(令和4)に約9654億円に増え、被災地支援目的のふるさと納税も根づいてきた。しかし、自治体の財政規模を無視した特典競争の過熱や、地場産品ではない高額返礼品の横行、都市部自治体の税収減少などが顕在化し、政府は地方税法を改正して、2019年度から、(1)返礼品は寄付額の30%以下の地場産品、(2)返礼品調達費などの経費は寄付額の50%以下、(3)対象自治体を総務省が指定し、ルールに従わない自治体は除外、との新制度に改め、2023年(令和1)10月から地場産品基準や経費範囲を厳格化した。これに対し泉佐野市(大阪)が国を相手どって制度除外(2020年最高裁で勝訴)や交付税減額(2023年大阪高裁で敗訴)は不当と訴えるなど、国と一部の自治体との間で制度設計や利用法をめぐる係争が続いている。

[矢野 武 2024年3月19日]

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百科事典マイペディア 「ふるさと納税」の意味・わかりやすい解説

ふるさと納税【ふるさとのうぜい】

日本国内において任意の自治体に寄付すること。また,寄付した額に応じて所得税と個人住民税から一定の控除が受けれる寄付金控除制度をいう。日本では進学や就職により,都市部に人口が集中する傾向がある。これにより都市部の自治体は多くの税収を得るが,地方自治体は税収を得られないといった現象が起こっている。この格差を是正するため,自らの意志で納税できる制度があっても良いのではないかという議論から始まった。ふるさととは,生まれ育った場所と捉えられがちであるが,お世話になった地方への恩返しや,応援したい地方など,各人の価値観により選んで寄付することが可能である。自治体によっては寄付金の使われる事業を選択することもできるため,これに賛同する寄付者もいる。寄付者の所得などに応じて寄付金の一部が控除対象として戻ってくるため,寄付者は小さな負担で寄付をすることが可能である。各自治体では寄付金額に応じて,その土地の名産品などを特典として設けることで,寄付者の拡大を図っている。近年これが過熱化し,寄付者にとってより良い特典を得るための制度の傾向が強くなり,税収が大きく減った自治体も見られている。

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知恵蔵mini 「ふるさと納税」の解説

ふるさと納税

納税者が応援したい自治体を選んで寄附をすると、所定の自己負担額を除いた金額から年収などに応じて所得税・住民税の控除が受けられる制度。納税者側のメリットだけでなく、地方間の税収格差を是正する効果もあるとされる。2008年度より導入され、特産品や宿泊券などの返礼品を贈る自治体の増加に伴い、広く普及した。しかし、自治体間の返礼品競争が過熱して高額な商品や地場産品以外の商品、換金性の高いギフト券などを返礼品とするケースが増え、問題視されるようになった。総務省の是正要請でも改善されなかったことから、19年6月1日、返礼品を寄付額の3割以下の地場産品に限定する新制度が導入された。

(2019-6-4)

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