ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「マトラーン」の意味・わかりやすい解説
マトラーン
Matrān, Khalīl
[没]1949. カイロ
アラブの近代詩人。 1890年から 1930年にかけてのエジプトの詩壇はアフマド・シャウキーとハーフィズ・イブラーヒームとマトラーンとによって代表された。前2者はエジプト生れで,エジプトではマトラーンよりも重んじられる傾向があったが,レバノンで生れたマトラーンは広くアラブ世界や西欧世界で前2者よりもよく知られる存在であった。ベイルートのマロン派キリスト教団の高等学校で学び,フランス語にも通じていた。のち同校の教師となったが,20歳のとき,たまたま発表した文章が当局に危険視され,フランスに亡命,フランス的教養を深めた。さらにエジプトに移り,カイロに定住。イスラム教徒の団結,アラブ民族の独立を悲願とし,イギリス人の支配からエジプトを脱却させる運動にも加わった。また『アハラーム』紙の記者として重要な活動を続けた。 47年には彼の文筆活動 50年を祝賀するつどいがカイロのオペラハウスで盛大に催され,『ハリール・マトラーン記念黄金冊』 al-Kitāb al-dhahabiyyah fī mihrajān Khalīl Matrān (1948) が出版された。「ディーワーン」 (個人詩集) がある。そのほかにシェークスピア,コルネイユ,ユゴーらの作品をアラビア語に訳している。
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