ミカエル(読み)みかえる(英語表記)mîkā'el ヘブライ語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミカエル」の意味・わかりやすい解説

ミカエル
みかえる
mîkā'el ヘブライ語
Michael 英語
Michael ドイツ語

ユダヤ教神観念の抽象化に伴って登場した、神と人を仲介する7人の天使長の1人(「エノク書」20章)。意味は「神のような者はだれか」。イスラエル民族を守護するためにサタンと闘争する守護天使(「ダニエル書」10章13、12章1、「ユダ書」9節、「ヨハネ黙示録」12章7)である。宗教美術のモチーフで、ミカエルが竜(サタン)を槍(やり)で退治する構図は不信仰エゴイズム自我)を克服する表象でもある。聖ミカエルの紋章銀色の地に先端が円形赤色十字架である。

[川又志朗]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミカエル」の意味・わかりやすい解説

ミカエル
Mikha'el; Michael

ユダヤ教,キリスト教における大天使の一人。天使長ともいう。ヘブライ語で「たれか神のごとき?」を意味するが,伝承によれば,悪魔の長ルキフェルが神に反逆したとき,天使の長ミカエルはこの語を叫んで悪魔と戦い,勝利を得たといわれる。天軍の総司令官とみなされ,イスラエルの民の守護者とされた。またキリスト教でも悪魔の軍勢と戦う天使軍の長とあがめられ,異教徒に対するキリスト教軍の総帥とされた。また戦争や災難のときに出現して,キリスト教徒の危機を救うとの信仰から,出現物語が各地に伝承され,記念の聖堂修道院などが建てられている。特にローマ・カトリックとギリシア正教で広く崇敬されている。イスラム教でも信仰を擁護する大天使としてミカエルを尊崇する。

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