日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミカンバエ」の意味・わかりやすい解説
ミカンバエ
みかんばえ / 蜜柑蠅
citrus fruit fly
[学] Dacus (Tetradacus) tsuneonis
昆虫綱双翅(そうし)目短角亜目ハエ群ミバエ科に属する昆虫。ミカンミバエともいう。体長10~11ミリメートル、翅長9~10ミリメートル。体は淡黄褐色。頭頂の単眼三角部は黒色。前額は幅広く、頭幅の3分の1で、前方へ向かってわずかに広がり、中央部はわずかに隆起し、1対の暗色点がある。顔面には触角窩(か)の口縁部に近く、1対の褐色楕円(だえん)紋がある。触角の第3節は長く、その基部の幅の4倍。触角刺毛は無毛、基部以外は黒色。胸部背面中央には倒Y字形の細い濃褐色紋があり、その外側に接して淡褐色の太い縦条が認められるが、生時は肩瘤(けんりゅう)と横線後方の小字形紋は黄褐色であり、乾燥標本では変色して不明瞭(ふめいりょう)となる。翅背前剛毛は1~2対。小楯板(しょうじゅんばん)前剛毛はなく、小楯板剛毛は1対。はねの前縁は帯黄色、縁紋と翅頂紋とは黒褐色。臀脈(でんみゃく)の末端は雄でも単純で、翅膜の伸展はない。腹部背面には細い十字形の黒色紋があり、その後方の2節にも、それぞれ1対の細い横帯が認められる。
年1回の発生で、成虫は6月上旬から8月上旬に現れる。成虫の寿命は約1か月で、交尾後、雌はミカンの幼果に産卵管を刺し、1か所に2~6個ずつ産卵する。幼虫(ウジ)は成長すると体長12ミリメートルとなるが、被害果は産卵場所よりしだいに黄変して外部から判別できるようになる。10~11月になると被害果は落下し、内部の老熟幼虫は早晩脱出して土中に入り、数センチメートルの深さで蛹化(ようか)する。落下以前に脱出するものもある。四国と九州ではそれぞれ部分的、奄美大島(あまみおおしま)、台湾、中国に分布する。九州では大正年間には大発生をもたらしたものであるが、近年は手入れを怠ったミカン園や、神社の森などの野生のタチバナに発生するにとどまっている。
[伊藤修四郎]