ミバエ(読み)みばえ(英語表記)fruit flies

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミバエ」の意味・わかりやすい解説

ミバエ
みばえ / 実蠅
果実蠅
fruit flies

昆虫綱双翅(そうし)目短角亜目ハエ群ミバエ科Tephritidaeの総称。この科のハエは体長2~15ミリメートル、一般的に5~6ミリメートルのものが多い。頭部は雌雄とも離眼的であるが、雌雄とも複眼の基部が伸長したものや、雄のみ角(つの)状の突起をもつものもある。頭部前額の額縁剛毛は上が1~2対、下が2~3対またはそれ以上存在し、後頭頂剛毛はほぼ平行して、けっして交差しない。はねでは、前縁脈は3か所で分断され、亜前縁脈は末端直角に近い角度で前方へ折れる。はねには黄色、褐色、黒色の美しい斑紋(はんもん)をもつものが多いが、はねに斑紋のあるハエのすべてがミバエ科ではない。雌の腹部には明瞭(めいりょう)な産卵管基部環節がある。

 幼虫は無頭のウジで、植物を加害するが、生活様式によって次のように分けられる。

(1)生果実に食入するもの。熱帯から温帯農作物の重要な害虫と目されるものが多い(チチュウカイミバエミカンコミバエウリミバエ、ミカンバエ、オウトウハマダラミバエなど)。

(2)植物の葉に潜るもの。

(3)植物の茎または根に食入するもの。このなかには虫こぶ虫癭(ちゅうえい))をつくるものもある。

(4)植物の花に食入するもの。とくにキク科に入るものが多い。

(5)その他。シロアリの巣やコウモリガの食入跡から発見されたものもある。さらにめずらしい例では、ほかの昆虫による虫こぶ内で、その棲み主を食べるという、肉食性のものが知られている。

[伊藤修四郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ミバエ」の意味・わかりやすい解説

ミバエ
Tephritidae; fruit fly

双翅目ミバエ科に属する昆虫の総称。体長2~20mmであるが,5mm内外のものが多い。翅に美しい斑紋のある種が多く,亜前縁脈の先端が直角に近い角度で前方に曲り,消える点で他と区別できる。成虫は花や葉の上などにみられ,止っているとき翅をゆっくりと上下する習性がある。幼虫は無頭の蛆 (うじ) で,植物を加害するが,生果実に潜入するもの,植物の葉に潜入するもの,虫 癭をつくるもの,花に潜入するものなどいろいろある。果実の害虫として有名なものが多く (チチュウカイミバエなど) ,日本ではミカンコミバエ,ウリミバエ Bractrocera cucurbitaeなどが南西諸島以南に産し,本土への侵入が警戒されている。 (→双翅類 , ハエ )  

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