日本大百科全書(ニッポニカ) 「ミツバヤツメ」の意味・わかりやすい解説
ミツバヤツメ
みつばやつめ / 三歯八目
Pacific lamprey
[学] Entosphenus tridentatus
頭甲綱ヤツメウナギ目ヤツメウナギ科に属する魚。別名ユウフツヤツメ。北太平洋、ベーリング海、チュクチ海東部などに広く分布する。日本では北海道勇払(ゆうふつ)川、宮城県名取川、栃木県那珂(なか)川水系と利根川水系、高知県吉野川水系のほか、青森県から岩手県にかけての太平洋沿岸からも捕れている。体はウナギ形をするが、口が吸盤状で胸びれや腹びれがなく、鰓孔(さいこう)が7対であるのが特徴。上口歯板の上に3本の歯があること、開口部にある側方の歯は各側とも4個あり、中央部の2本は3尖頭(せんとう)、上下の2本は2尖頭であることなどの特徴で、日本産ヤツメウナギ属の3種(スナヤツメ、シベリアヤツメ、カワヤツメ)と区別できる。大きなものは全長70センチメートル余りになるが、地域によって変異がある。海で大型魚に寄生して成長した成魚は、夏から秋に川へ入り、上流へ遡上(そじょう)して4月ごろに産卵する。卵は3週間前後で孵化(ふか)し、稚魚は3~5年間、川床の中に潜んで過ごしたのち、変態して春に海へ下る。しかし、降海しないで淡水で寄生生活をすることもある。環境省のレッドリスト(2013)では、栃木県のミツバヤツメが、地域的に孤立している個体群で、絶滅の恐れが高い「絶滅のおそれのある地域個体群」に指定されている。
[落合 明・尼岡邦夫]