日本大百科全書(ニッポニカ) 「スナヤツメ」の意味・わかりやすい解説
スナヤツメ
すなやつめ / 砂八目
far eastern brook lamprey
無顎(むがく)綱ヤツメウナギ目ヤツメウナギ科に属する淡水魚の総称。カゲヤツメ、ギナヤツメともいう。近年、日本産スナヤツメに北方種Lethenteron sp.Nと南方種Lethenteron sp.Sの2種が生息することが判明した。外見上はほとんど違いがないが、近年のDNA研究によって、別種であることがわかった。北方種は北海道、琵琶(びわ)湖に流入する河川、三重県海蔵(かいぞう)川以北の本州に、南方種は秋田県檜木(ひのき)内川以南の本州、四国、九州北部と朝鮮半島に分布する。両種ともまだ学名は確定していない。体は円筒形、目の後方に7個の鰓孔(さいこう)が1列に並ぶ。筋節数は60個前後。全長約15センチメートル。一生を淡水で生活し、4年目の秋から冬に変態したのち、まったく餌(えさ)をとらないで成熟し、5~6月ごろに上流で産卵して死ぬ。砂や小石のなかに埋められた卵は10日余りで孵化(ふか)し、45日ぐらいでアンモシーテスammocoetesとよばれる成体と著しく違った形の幼生となる。この幼生は3年間、川の中~下流の柔らかい川底に掘った孔道の中で生活し、泥中の有機物や珪藻(けいそう)類を食べる。両種はともに環境省のレッド・リスト(2013)で絶滅の危険性が増大している絶滅危惧Ⅱ類に指定されている。
[落合 明・尼岡邦夫]