日本大百科全書(ニッポニカ) 「カワヤツメ」の意味・わかりやすい解説
カワヤツメ
かわやつめ / 川八目
arctic lamprey
[学] Lethenteron japonicum
頭甲綱ヤツメウナギ目ヤツメウナギ科に属する魚。太平洋側は茨城県、日本海側は島根県以北、北極海を取り巻く大陸に分布する。体長60センチメートルに達し、体は細長くウナギ形。目の後ろに7個の鰓孔(さいこう)が1列に並ぶ。上口の歯板の歯は2本で、側唇の歯は3対。尾びれの先端が黒いことでシベリアヤツメに似るが、第2背びれの先端が黒いこと、下口の歯板の歯は鋭いことなどで区別する。春から夏に河川の上流の砂礫(されき)底に雄が産卵床をつくる。雄は雌の頭に吸い付き、体を巻き付けて産卵し、産卵後は雌雄とも死ぬ。産み付けられた卵は直径約1ミリメートル。全割型の卵発生を行うことで特異である。春から夏に河川の上流の砂礫底に産み付けられた卵は、孵化(ふか)後4年間をナメクジウオに似たアンモシーテスammocoetesとよばれる幼生生活ののち、海に下って2~3年間過ごす。その間、サケ・マス類、カレイ類、タラ類の血を吸って成長する。袋網、叉手(さで)網、刺(さし)網、ヤツメ筌(うけ)で漁獲し、蒲焼(かばや)きなどにされる。環境省のレッド・リスト(2013)で、絶滅の危険が増大している、絶滅危惧種Ⅱ類に指定されている。
[落合 明・尼岡邦夫]