むさと(読み)ムサト

デジタル大辞泉 「むさと」の意味・読み・例文・類語

むさ‐と

[副]《「むざと」とも》
軽率にことをするさま。うっかりと。
「やいやい、―傍へな寄りおっそ」〈虎清狂・蟹山伏
いいかげんにことをするさま。やたらに。
松茸まつだけなども、―食ぶるは」〈咄・きのふはけふ・上〉
取るに足りないさま。
「―したる食物をつつしむべし」〈仮・東海道名所記・一〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「むさと」の意味・読み・例文・類語

むさ‐と

  1. 〘 副詞 〙 ( 「むざと」とも )
  2. とるべき態度・守るべき節度をわきまえず、無分別・不注意であるさまを表わす語。軽はずみに。思慮もなく。うっかりと。
    1. [初出の実例]「矢ごろ矢たけと云ふ事。むさと云まじき事也」(出典:弓張記(1450‐1500頃か))
    2. 「Musato(ムサト) シタ コトヲ ユウ」(出典日葡辞書(1603‐04))
  3. 正当な理由もなく、または、いいかげんに事を行なうさまを表わす語。みだりに。むやみに。やたらに。
    1. [初出の実例]「いわれなうてはむさと字をそえまいぞ」(出典:玉塵抄(1563)二八)
    2. 「其村々ににくきもの在之とて、御検地などむさとあしく仕まじく候」(出典:島津家文書(文祿三年(1594)七月)・島津氏分国検地奉行起請文前書案)
  4. あまりれっきとしたものでないさま、ちゃんとしていないさまを表わす語。
    1. [初出の実例]「我らがやうな尊き知識などが、何とて、むさとしたる所へ寄るものか」(出典:咄本・昨日は今日の物語(1614‐24頃)下)
  5. とりとめなく、無為に過ごすさまを表わす語。
    1. [初出の実例]「物をきかじ見じと云心、然どもむさとしては叶まい」(出典:古文真宝彦龍抄(1490頃))
  6. あっさりとむぞうさに事を行なうさまを表わす語。
    1. [初出の実例]「薄紅の一枚をむざと許りに肩より投げ懸けて」(出典:薤露行(1905)〈夏目漱石〉一)

むさとの語誌

近世初期までは「むさと」と清音。「みずからを省みて恥じないこと」を表わす「無慙(むざん)」との意味の重なりから、「むざと」や「むざむざ」の語形が生じたと考えられる。明治以降「むざと」はほとんど使われなくなり、「むざむざ」のみが残る。

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