メネンデスピダル(英語表記)Ramón Menéndez Pidal

改訂新版 世界大百科事典 「メネンデスピダル」の意味・わかりやすい解説

メネンデス・ピダル
Ramón Menéndez Pidal
生没年:1869-1968

スペイン文学史家,言語学者。マドリード大学メネンデス・イ・ペラヨに師事し,1899年マドリード大学のロマンス言語学の教授に就任。また1902年に王立アカデミーの会員になり,のちに長くその会長の座にあった。師メネンデス・イ・ペラヨがスペイン文化の広範な総合に秀でたのに対し,彼はより学問的で厳密な分析的方法を適用し,言語,文学,歴史にまたがる中世文化の研究に大きな成果をあげたが,とりわけ《わがシッドの歌--原文文法語彙》(1908-12)は世界的に高い評価を受け,その後のエル・シッド研究の基盤となった。そのほか,初期スペイン語の音韻変化に関する画期的な著作《スペイン語歴史文法提要》(1904),中世詩に関する論考《吟遊詩と吟遊詩人》(1924),11世紀までのスペイン語の徹底的な研究である《スペイン語起源論》(1926)などがあるが,彼の功績として忘れてはならないものに,現在でもスペイン文献学研究の中心となっている雑誌《スペイン文献学評論(RFE)》の創刊がある。また彼の門下からは,A.カストロD.アロンソらの俊英が輩出している。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「メネンデスピダル」の意味・わかりやすい解説

メネンデス・ピダル
めねんですぴだる
Ramón Menéndez Pidal
(1869―1968)

スペインの歴史家、言語学者。師メネンデス・イ・ペラーヨが開拓したスペイン文学、歴史研究の広大な領野をさらに専門的、学問的に掘り下げた。1910年「歴史学研究所」を創設、1914年弟子のカストロAmérico Castro(1885―1972)らとともに雑誌『スペイン言語学誌』を創刊、また2期にわたってスペイン言語アカデミー会長を務めるなど、20世紀前半のスペインの学界をリードした。数多くの優れた著作を遺(のこ)したが、なかでも『スペイン語歴史文法提要』(1904)、彼の名を一躍世界のロマニストの最先端に位置づけた『わがシードの歌研究』(1908~1912)、そして中世カスティーリャの全体像に鋭く迫った三つの作品、すなわち『スペイン語の起源』(1926)、『エル・シッドのスペイン』(1929)、『スペイン文学に見るカスティーリャ叙事詩』(1945、初出はフランス語版1910)などが有名。

[佐々木孝 2018年8月21日]

『ラモン・メネンデス・ピダル著、佐々木孝訳『スペイン精神史序説』(1974・法政大学出版局)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メネンデスピダル」の意味・わかりやすい解説

メネンデス・ピダル
Menéndez Pidal, Ramón

[生]1869.3.13. ラコルニャ
[没]1968.11.14. マドリード
スペインの言語学者,文学史家。「シッドの歌」をはじめとする中世叙事詩の再発見や俗ラテン語から近代スペイン語にいたる言語発達史の研究は,20世紀におけるスペイン言語学の最大の業績とされる。主著『わがシッドの歌』 Cantar de mío Cid (1908~11,44~48) ,『スペイン語歴史文法提要』 Manual de gramática histórica española elemental (1904) ,『スペイン語の起源』 Orígenes del español (26) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android