日本大百科全書(ニッポニカ) 「モイラ」の意味・わかりやすい解説
モイラ
もいら
Moira
ギリシア神話の運命の女神。普通は複数形モイライMoiraiが用いられる。夜の女神ニクスの子とされるが、ゼウスとテミスの子とする説もあった。もともとモイラとは、「分け前」「割当て」の意で、まず生と死とに結び付けられたが、最終的には運命の女神として擬人化されたらしい。モイライは3人の老女神で、クロト(紡ぐ女)は運命を紡ぎ出し、ラケシス(配給する女)は運命を割り当てて運命の糸の長さを決め、アトロポス(変わるところのない女)は運命の糸を裁断する。3人には自分自身の神話というものがないが、メレアグロスが生まれて7日目の夜、母親のアルタイアは、夢うつつのうちに3人の老女が現れて、メレアグロスの寿命の長さを告げて姿を消すのをみたという。これなどはモイライが神話に登場する例であろう。ローマではパルカイParcaeが同一視されている。
[伊藤照夫]