テミス(読み)てみす(英語表記)Themis

翻訳|Themis

日本大百科全書(ニッポニカ) 「テミス」の意味・わかりやすい解説

テミス
てみす
Themis

ギリシア神話女神。ティタン神の1人で、ゼウスの妻となってホーラ(季節)、モイラ(運命)、エウノミア(秩序)、ディケ正義)、エイレネ(平和)を生むが、これらの擬人神の誕生は、おそらく最高神ゼウスの機能を示す縁起譚(たん)であろう。一説にはプロメテウスの母であるともいう。テミスとは「掟(おきて)、慣例」を意味し、その擬人化された神であるが、大地(ガイア)の異称とも考えられている。テミスは、ティタン神族とゼウスの戦いがゼウスの勝利となることを子のプロメテウスに教え、ティタンたちをゼウスに従うよう説得させたという。こうして彼女はティタン神族に属しながらもオリンポスの神々の一員となり、預言の女神となった。アポロンと交代するまでは、デルフォイの神託はテミスのものであり、またアポロンに預言の術を授けたのはテミスであったともいわれる。

[伊藤照夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「テミス」の意味・わかりやすい解説

テミス
Themis

ギリシア神話の掟の女神。ウラノスとガイアの結婚から生れたティタン神族の一員だが,ゼウスの妻となり,ホライモイライを産んだとされる。託宣の女神としての性格ももち,デルフォイの神託所をガイアから引継ぎ,アポロンに譲り渡すまでその主であったともいわれる。法と正義の体現者として,すべての神々に敬われる存在。

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