日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ものづくり基盤技術振興基本法
ものづくりきばんぎじゅつしんこうきほんほう
日本の「ものづくり基盤技術」の振興に関する施策を、総合的かつ計画的に推進することを目的とする法律(平成11年法律第2号)。製造業を日本経済の基幹産業と位置づけ、製造業の育成強化や熟練技能者の地位向上を謳(うた)っている。建材・機械・鋳鍛造(ちゅうたんぞう)などの中小メーカーの組合からなるゼンキン連合の働きかけを受け、超党派の議員立法として国会に提出され、1999年(平成11)3月に成立した。同年6月より施行。
就業構造の変化、海外の地域における工業化の進展等による競争条件の変化、その他の経済の多様かつ構造的な変化による影響を受け、国内総生産に占める製造業の割合が低下し、その衰退が懸念されるとともに、ものづくり基盤技術の継承が困難になりつつあるという事態に対処すべく、法整備が必要とされた。
本法において、「ものづくり基盤技術」とは、「工業製品の設計、製造又は修理に係る技術のうち汎用性を有し、製造業の発展を支えるもの」をいう。また「ものづくり基盤産業」とは、「ものづくり基盤技術を主として利用して行う事業が属する業種であって、製造業又は機械修理業、ソフトウェア業、デザイン業、機械設計業その他の工業製品の設計、製造若(も)しくは修理と密接に関連する事業活動を行う業種に属するもの」をいう。
本法により、政府は、ものづくり基盤技術の振興に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、「ものづくり基盤技術基本計画」を策定することが義務づけられる。国は、「基本的施策」として、(1)ものづくり基盤技術の研究開発、(2)ものづくり事業者と大学等の連携、(3)ものづくり労働者の確保、(4)熟練ものづくり労働者の活用、(5)産業集積の推進、(6)中小企業の育成、(7)学習の振興、(8)国際協力、(9)意見の反映、などについて必要な施策を講じるものとしている。
なお、ものづくり基盤技術の振興に関して講じた施策に関する報告書(年次報告書)の提出を、政府に対して義務づけられていることを受け、厚生労働省、経済産業省、文部科学省は連携して、毎年「ものづくり基盤技術の振興施策」(ものづくり白書)を作成し公表している。
[田中 謙]