日本大百科全書(ニッポニカ) 「モンゴルフィエ」の意味・わかりやすい解説
モンゴルフィエ(兄弟)
もんごるふぃえ
兄ジョゼフJoseph Michel de Montgolfier(1740―1810)、弟ジャックJacques Étienne de Montgolfier(1745―1799)熱気球の発明者。フランスのリヨンに近いアノネイで製紙業を営んでいたが、煙が上昇するようすを観察して煙が空気より軽いためと考え、人類初の航空機である熱気球をつくった。直径約10メートルのアマ製の気球を紙で内張りし、煙、実は熱空気を詰めて、1783年6月5日、アノネイ市広場から上昇させた。同じ年の11月21日にはパリで、ド・ロジエJ. F. Pilâtre de Rozier(1756―1785)とダルランド侯爵François, Marquis d'Arlandes(1742―1809)が搭乗して、最初の有人飛行に成功した。最初の無人気球は約2キロメートル飛んだにすぎなかったが、有人気球はパリ南部を回って東へ約8キロメートル飛んだ。まずニワトリ、アヒル、ヒツジで動物飛行を行い、ついで綱で留めた上昇試験で人体への高度の影響を調べた後に人間を搭乗させた経過はきわめて科学的であった。ただ、空へ昇る煙から気球を着想しただけで、加熱された空気が軽くなり浮揚力をもつ原理は知らなかった。物理学者のJ・A・C・シャルルは、同年8月27日に水素を満たした無人気球を飛ばして水素気球時代を開いたが、熱気球が素人(しろうと)のモンゴルフィエ兄弟によって発明されたところがおもしろい。科学精神さえあれば、専門家よりもむしろ画期的な発見が可能である。熱気球はその簡単さから、現在はスポーツとして愛好されている。
[佐貫亦男]