知恵蔵 「もんじゅ廃炉」の解説
もんじゅ廃炉
もんじゅは、プルトニウムとウランを燃料に、消費した以上の燃料を生成する高速増殖炉の原型炉として計画され、85年に本体工事に着工した。名称は知恵をつかさどる文殊菩薩にちなんでいる。94年に初臨界に達し、95年8月に初発電に至るが、12月には数百トンもの冷却材の金属ナトリウムが漏洩(ろうえい)する事故を起こした。その後改造工事などが行われたが、工事ミスなどが相次いだ。運転再開を不安視する声も強かったが、2010年5月に運転を再開。しかし、トラブルや操作ミスが頻発し、それらの公表が遅れるなど、問題が続出した。8月には燃料交換片付け作業中に炉内中継装置の落下事故を起こし、現場の管理職が自殺するなどの事態に至り、復旧には12年までかかった。その後も1万点もの保安機器の点検漏れなどが発覚し、原子力規制委員会はもんじゅの無期限使用停止を決めた。
原子力規制委員会は、JAEAにはもんじゅを安全に運営できる能力がないとしたものの、新しい運営主体と目していた電力会社やメーカーから引き受けを事実上拒否されたこと、もんじゅを再運転するには準備に8年、数千億円の費用を要することなどから、廃炉を決定した。廃炉作業は17年度から使用済み核燃料の取り出し作業を開始し、最終的な作業完了は35年頃となる。
(金谷俊秀 ライター/2017年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報