日本大百科全書(ニッポニカ) 「やりがんな」の意味・わかりやすい解説
やりがんな
やりがんな /
鉇
槍鉋
鑓鉋
木材の表面を削り仕上げる工具の一種。やりがんなは古墳時代から古代、中世にかけての鉋(かんな)で、法隆寺、唐招提寺、平等院、東大寺南大門などは、やりがんなで仕上げられている。正倉院にも伝存し、中国から朝鮮半島を経由してもたらされたものの一つである。室町時代なかばに台鉋(だいがんな)が登場するまで使われていた。現在では、古い建物の修理や復原工事などに使われるだけで、一般にはほとんど使われない。
形状は、やや上に反った剣先状にとがらせた両刃の刃先を長さ40センチメートルくらいから1.5メートルくらいの棒状の柄に取り付けたもので、ちょうなで斫(はつ)った(削った)面を仕上げる。ちょうなで斫った面は、その刃幅の境目が凸凹になっており、凸部分をやりがんなで削り取って表面を平らにする。
台鉋と違い、ていねいに仕上げても表面に凹凸の細かい条痕ができる。
使い方は、左右の手を肩幅ぐらいに広げて握り、押したり引いたりして削る。
刃先の形状で、刃の湾曲の度合いが釣り針のようになっているのは「なまぞり」といい、仏像などの彫刻に用いられる。
[赤尾建蔵 2021年7月16日]