カンナ科(APG分類:カンナ科)の春植え球根草。熱帯アメリカ、熱帯アジア、アフリカ原産のダンドク(曇華)C. indica var. indica L.(C. indica L. var. orientalis Hook.f.)は原種の一つで、日本には元禄(げんろく)時代(1688~1704)までに渡来し、鹿児島などに帰化し、現在は半自生状態になっている。草丈は1.5~2メートル、花は緋赤(ひせき)色の小輪で、観賞価値は低く、現在ではほとんど栽培されない。一般に栽培するカンナは、和名をハナカンナC. × generalis Bailey(別名オランダダンドク)とよぶ。これは熱帯アメリカ、アジア、アフリカなどの原種の交雑によってつくられた園芸種で、1000種に及ぶ品種が作出され、園芸上は今日フレンチカンナとイタリアンカンナの2種を総称してカンナ・ゲネラーリスが用いられている。球根は根茎。草丈は品種によって異なるが、0.8~1.5メートル、葉は緑葉と銅色葉がある。花茎の先に総状花序をつけ、初夏から降霜期まで、白、桃、赤、橙黄(とうこう)、黄色、あるいは絞りの花を開き、花壇によく植えられる。
[岩井英明 2019年6月18日]
寒さに弱いが、性質は非常に強く、日当りと排水のよい肥沃(ひよく)な所でよく育つ。4月から5月上旬に前年の株を掘り上げ、2、3芽ずつに分け、株間60~90センチメートルとし、深さ30センチメートルに土を掘り、元肥として堆肥(たいひ)、化成肥料をよく土と混ぜ、その上に球根を置き、10センチメートルほど覆土する。発芽後は生育に応じて液肥などを追肥する。球根は、霜で葉が傷み始めたころ掘り上げて貯蔵する。
[岩井英明 2019年6月18日]
近代カンナの改良は、フランスの外交官アネが19世紀前半に手がけ、花が大きいフレンチ系のカンナは、フランスの園芸家クロジィが南アメリカのイリディフローラC. iridiflora Ruiz et Pav.とワルセウィッチィC. warszewiczii Dietr.を1863年にかけ合わせた雑種が基になってつくられた。カンナの種子は固く、南アメリカのインディオはこれを首飾りにしたり、楽器のマラカスの中に入れて音を出させる。また、熱帯アメリカ原産の食用カンナC. edulis Ker.の球根からは、デンプンをとっている。
[湯浅浩史 2019年6月18日]
熱帯に広く分布するカンナ(ダンドク)科の植物。約75種知られるが,すべて多年草で,各種間の交配によって花のきれいな観賞用のカンナが作出され,広く栽植されている。地下に発達した根茎を有し,茎は円柱形で直立し,高さ50~200cm。互生する葉は大きな楕円形で緑色か紫銅色。花は両性花で,総状花序につき,3枚の花弁は小さく基部が合着して筒状になり,萼片は3枚で花後も残る。3~4枚の花びらのようにみえるのは,不稔のおしべが変形したもの。花期は7~10月。子房は下位で3室。果実は蒴果(さくか)。種子は硬質の球形で,黒く光沢がある。観賞用に栽培されている園芸種ハナカンナは,種間交配によって作出されたもので,多くは不稔になっている。それらは,1848年にフランスで作出された小型で大輪花をつけるフレンチ・カンナ系C.×generalis Baileyと,19世紀末にイタリアで作出された花がランに似たイタリアン・カンナ系C.×orchiodes Baileyに大別される。フレンチ・カンナ系の品種ではアメリカン・レッド・クロス(緑葉,鮮紅色花),ディバルトロ(紫銅色葉,桃色花),アンアーファン(緑葉,黄色に赤点のある花),ユーレカ(緑葉,白花),ノコミス(紫銅色葉,赤花)が,イタリアン・カンナ系ではキング・ハンバート(紫銅色葉,濃赤色の花)が有名である。
カンナ属Cannaにはほかに,江戸時代に渡来し現在九州南部の帰化植物になっているダンドクC.indica L.var.orientalis Hook.f.がある。また南アメリカ原産のショクヨウカンナC.edulis Ker-Gawl.は,その肥大した多肉根茎からデンプンを採るために熱帯各地で栽培されている。カンナ属の他の種も根茎を食用にするものがある。また,ダンドクは薬用にしたり,種子をネックレスを作るのに用いる。
カンナは栽培しやすい。5月上旬に1~2芽の根茎を約60cm間隔に植える。覆土4cm。肥料は油かすなど。秋,低温で地上部が枯れると,土寄せしてわらなどで覆うか,株のまま掘り上げて貯蔵する。矮性種は鉢植えにもされる。繁殖は分球による。
執筆者:川畑 寅三郎
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