ゆたかな社会(読み)ゆたかなしゃかい(その他表記)The Affluent Society

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゆたかな社会」の意味・わかりやすい解説

ゆたかな社会
ゆたかなしゃかい
The Affluent Society

J.K.ガルブレイスの著作。 1958年刊行。これまでの経済学貧困,不平等,不安といった生産者側を問題としてきたのに対して,この著作では大衆の豊かさを問題とすべきだとし,豊かな社会だからこそさまざまな需要の喚起法 (たとえば広告やマーケティング) が問題となるとした。こうして必要に基づく需要よりも生産者側が作出す需要が重要となった結果,欲望が生産に依存するといういわゆる依存効果が働くようになる。他方,社会的な必要はないがしろにされ,私的投資に比べて社会的公共財への投資は過小になりがちであり,その社会的バランスを補正すべき点にこそ政府役割があるとされる。本書は当時大きな反響を呼び,社会批評家としてのガルブレイスの名を不動のものとした。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のゆたかな社会の言及

【ガルブレース】より

制度学派の流れをくむ学風で現代資本主義を鋭く分析。大企業支配のもとにある現代の“ゆたかな社会”が,(1)慢性的インフレーション,(2)私的生産のゆたかさと公共サービスの貧しさという社会的アンバランス,(3)宣伝広告による欲望の創出のため不断の飢餓感をもつことを指摘した。大企業では所有と経営の分離が進み,実質的支配権が経営者・技術者などの専門家集団(テクノストラクチャー)に移る。…

※「ゆたかな社会」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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