日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨミノアシロ」の意味・わかりやすい解説
ヨミノアシロ
よみのあしろ / 黄泉阿代
deepsea brotula
[学] Abyssobrotula galatheae
硬骨魚綱アシロ目アシロ科に属する海水魚。日本海溝、伊豆・小笠原(おがさわら)海溝、ニュージーランド北東海域、東インド洋、ギニア湾、パナマ湾、カリブ海などに分布する。体は細長く、やや側扁(そくへん)する。頭は小さくて丸い。目は小さくて痕跡(こんせき)的で、外部からわずかに確認できるほどである。口は大きく、上顎(じょうがく)の後端は目の後端を大きく越える。両顎歯は小さくてとがり、不規則に並ぶ。鋤骨(じょこつ)(頭蓋(とうがい)床の最前端にある骨)と口蓋骨に顎歯より大きい歯がある。皮膚は透明で、頭と体は鱗(うろこ)で覆われる。背びれは胸びれ基部近くの上方から、臀(しり)びれは胸びれの後端近くの下方から始まり、両ひれは後方で小さい尾びれとつながる。胸びれは長く、下部軟条が遊離せず、上部中央に切れ込みがない。腹びれは2本で、口角部のわずかに後方から始まり、外側の軟条は内側のものより長い。体は黄色みがかってみえるが、これは透明な皮膚の下の筋肉の色である。鰓孔(さいこう)は黒く、腹膜は暗褐色。最大体長は16.5センチメートル。水深3110~8370メートルの深海に生息する。1970年にデンマークの調査隊のガラテア号が大西洋プエルト・リコ海溝の8370メートルの超深海からオッタートロールでヨミノアシロを採集した。これは魚類のもっとも深いところからの採集記録である。
[尼岡邦夫 2016年10月19日]