オッタートロール(読み)おったーとろーる(英語表記)otter trawl

日本大百科全書(ニッポニカ) 「オッタートロール」の意味・わかりやすい解説

オッタートロール
おったーとろーる
otter trawl

オッターボードotter board(拡網板、開口板)を使用して行う底引網をいう。引網類の一種で、底引網のうちの引回し網類に属する。1894年にスコットランドで考案され、日本に導入されたのは1908年(明治41)で、深江丸(169トン)の操業がその始めである。日本古来のものでは板引網が似ている。漁獲効率がきわめて高く、もっとも合理的な漁法で、ヨーロッパやアメリカでも広く使用されている。オッターボードは、曳網(えいもう)中、水の抵抗によって網口を左右に開かせる働きをする。取り付け方法としては、袖網(そであみ)前部の浮子(あば)綱と沈子(ちんし)綱に直接取り付けるダブルリガー用オッターボードと、両袖網に取り付けられた手綱(ハンドロープhand rope)と引綱(ワープwarp)との間にオッターボードを取り付ける方法などがある。形態は横型、縦型、円筒型などがあるが、現在は縦型で断面が翼形のもの(縦わん曲型)がもっとも普及している。

 底引網類では、曳網中に網口をできるだけ広く左右に広げるため、各種の開口方法が用いられている。(1)オッターボードを用いる方法、(2)二艘(そう)引による方法、(3)網口に桁(けた)またはビーム(梁(はり))を取り付ける方法、(4)1艘で網を引回す方法、(5)長い竿(さお)を張り出して網の引綱をつなぐ方法などがあるが、もっとも効果的な開口方法がオッターボードである。オッターボードの当初の目的は、底引網の網口を広げることであったが、底層のみならず中層や比較的表層水中を曳網する技法も考案され、現在は底引網に限らず、表層や中層のオッタートロールも操業されている。

 底引網類は底生魚類を漁獲対象としているが、浮魚類に比較して移動力が少なく、多獲されやすい生物を対象とするため乱獲の危険性が高い。また、目的とする生物以外に海底に生息している生物をも根こそぎ漁獲してしまい、海底の生態系破壊にもつながりかねないため、選択性のある漁具の開発が進められている。

[添田秀男・吉原喜好]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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