日本大百科全書(ニッポニカ) 「ライヒャルト」の意味・わかりやすい解説
ライヒャルト
らいひゃると
Johann Friedrich Reichardt
(1752―1814)
ゲーテと同時代のドイツの作曲家、音楽評論家。初期ロマン派のジングシュピールや歌曲の作曲家として重要。東プロイセンのケーニヒスベルク(現ロシア領カリーニングラード)に生まれ、同地とライプツィヒの大学で法律と哲学を学んだ。音楽はライプツィヒの当時のトマスカントルだったアダム・ヒラーと、ドレスデンのホミリウスに師事した。1771~74年ドイツ中を旅行し『ある音楽旅行者の手紙』2巻(1774~76)を出版している。75~95年ポツダムのフリードリヒ大王の宮廷楽長を務めたが、フランス革命に共感を示して解雇され、ハレの製塩検査官として同地郊外のギービヒェンシュタインに居を構えた。そこにはティーク、ノバーリス、シュレーゲル、ブレンターノ、アルニム、アイヒェンドルフなどの若い詩人や作曲家たちが集い、ロマン主義の重要なサロンの一つとなった。1808年には短期間カッセル宮廷楽長を務め、ウィーンに旅行してハイドンやベートーベンを訪れているが、翌年ギービヒェンシュタインに帰り、同地で没した。
[樋口隆一]