日本大百科全書(ニッポニカ) 「アルニム」の意味・わかりやすい解説
アルニム(Ludwig Achim von Arnim)
あるにむ
Ludwig Achim von Arnim
(1781―1831)
ドイツ後期ロマン派の作家。ベルリンに生まれる。ハレとゲッティンゲンの大学で法律、自然科学などを学ぶ。処女作『ホリンの愛の生活』(1802)を著し、西欧諸国を旅行後、ハイデルベルクで親友C・ブレンターノと、グリム童話集と並称される最初の包括的ドイツ民謡集『少年の魔法の角笛』(1805~1808)を編纂(へんさん)、またハイデルベルク・ロマン派の機関誌『隠者の新聞』発刊(1808)のほか、長編『伯爵夫人ドロレスの貧困、富裕、過ち、贖(つぐな)い』(1810)を執筆、祖国の精神的遺産の継承と時代の更新に努めた。ブレンターノの妹ベッティーナとの結婚(1811)数年後には都会生活を離れ、ウィーペルスドルフで生涯を送り、未完の歴史小説『王冠の守護者』(1817)、幻想的短編『エジプトのイサベラ』(1812)、『ラトノオ砦(とりで)の狂気の傷痍(しょうい)兵』(1818)、数編の劇作などを残す。空想と現実の錯綜(さくそう)する彼の文学はとかく無形式と評されたが、近年新たな評価もみられる。
[富田武正]
『深田甫訳『エジプトのイサベラ』(1976・国書刊行会)』