火山泥流または土石流のこと。インドネシア語に由来し,豪雨ののち火山地域に発生する岩塊土砂と水の混合物が洪水のように流下する現象。まれには噴火口から直接泥状物質が噴出し流下する場合もあるが,多くは火山の噴火とは直接関係なく,いったん堆積した岩塊や火山灰が地表の流水に混じって流下する現象を総称する。しかし,火山地域における災害の原因としてはラハールが最も主要な役割を演じ,生じる損害は火山噴火自体による被害よりもはるかに大きい。火山地域は一般に傾斜が大で植生のない裸地が多く,固結していない土砂や火山灰が大量に存在するため,比較的少量の降雨でもラハールが発生する。いったん発生したラハールは斜面の急な上流部では秒速数十mに達することもあり,直径数mもある岩塊を運搬することがある。大規模なものは小地形を乗り越え,橋や建物を破壊し,緩傾斜地では扇状地をつくって広い面積に土砂を堆積し農地などを荒廃させる。1977-79年の有珠火山,1955年以来つづいている桜島の噴火においてもラハールの発生が防災対策上最大の問題となっている。これを防ぐには通常,砂防ダム,導水路の構築,火山体斜面の緑化・安定化などをきめ細かく行うことが必要である。
執筆者:荒牧 重雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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