火山泥流(読み)カザンデイリュウ(英語表記)volcanic mud flow

デジタル大辞泉 「火山泥流」の意味・読み・例文・類語

かざん‐でいりゅう〔クワザンデイリウ〕【火山泥流】

火山砕屑物さいせつぶつが多量の水と混ざって山腹を高速で流れ下る現象火口湖で噴火したときや、堆積たいせきした火山灰に大雨が降ったときに生じる。ラハール

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精選版 日本国語大辞典 「火山泥流」の意味・読み・例文・類語

かざん‐でいりゅうクヮザンデイリウ【火山泥流】

  1. 〘 名詞 〙 火山砕屑(さいせつ)物が、雨水地下水、火口湖水などと混じり合って、火山の斜面を下る流れとなったもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「火山泥流」の意味・わかりやすい解説

火山泥流
かざんでいりゅう
volcanic mud flow

火山の斜面に堆積(たいせき)した火山噴出物が、大雨などによって多量の水分を含み、山腹を流れ下る現象。火山地域におこる土石流のこと。ときには秒速数十メートルにも達する高速で、下流まで一気に流れ下るので流域地域が広く破壊される災害となることが多い。細かい火山灰の地層が水を通さないので、地表水が谷の部分に集まって流路の土砂を取り込み泥流となる。このため、水蒸気爆発など火山灰を多く放出する噴火中に発生することが多い。しばしば熱い熱泥流が噴火中に発生することもある。

 1926年(大正15)の積雪期に発生した十勝岳(とかちだけ)の噴火では、火口丘の一部が崩れて、融雪による泥流が発生した。爆発の約25分後には泥流が20キロメートル以上も離れた上富良野(かみふらの)町の居住地を急襲し、死者144人などの惨害を出した。1985年にコロンビアルイス火山(ネバド・デル・ルイス火山)で発生した火山噴火では、山頂部の氷河が溶け、山頂から40キロメートルも離れた麓(ふもと)の町アルメロに泥流が流れ込み、2万3000人もの死者が出た。また、火山泥流は、火山爆発高空に上昇した水蒸気冷却・凝結して生じた豪雨で、発生ないし助長されることもある。さらに、1783年(天明3)の浅間山(あさまやま)大噴火の鎌原(かんばら)熱雲のように、火砕流岩屑(がんせつ)なだれが河川に流入し、泥流に変わるものもある。三宅島(みやけじま)で2000年(平成12)に発生したマグマ水蒸気爆発では、山腹に玄武岩質の細かい火山灰が厚く堆積し、その後数年にわたって大雨の際に泥流が繰り返して発生した。

[諏訪 彰・中田節也]

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改訂新版 世界大百科事典 「火山泥流」の意味・わかりやすい解説

火山泥流 (かざんでいりゅう)
volcanic mud flow

火山噴出物または火山体の崩壊したものが,表流水や融雪水と混じって山腹を流下する現象。噴火や水蒸気爆発など火山活動が直接の引金になるもの,火口湖やカルデラ壁の崩壊,豪雨のみによるものなど原因も多様で,流下速度や流下形態もいろいろである。大きい礫(れき)が密集したもの,大部分が泥からなるもの(狭義の泥流),その中間のものなど流下物も多様である。どの場合でも,細かい火山性砕屑物(さいせつぶつ)と水が混じり,比重・粘性の大きい混合物が間を満たし,そのため巨礫も浮かんで運ばれる。泥流堆積物は巨大な火山岩塊から微細な火山灰までのものが混じり,雑然とした状態を示す。大規模な流下の場合には,中・末端部に特有な流れ山(泥流丘)を生ずる(鳥海山麓の象潟(きさがた),北海道駒ヶ岳山麓の大沼・小沼,磐梯山北麓など)。泥流という語は日本語,英語ともに泥という字が誤解を与えやすいのでラハールとして一括した方がよいという意見もある。日本の火山斜面で,崩壊物や谷の堆積物が急速に流下し,先端部に巨礫が集中し,衝撃力の大きな特有な流れ方をするとき土石流という。これは山麓に大きな災害をもたらす。激しい爆発で山体がくずれ,岩屑なだれ(デブリアバランシュdebrisavalanche)が流下し,その下流部では水と混じり泥分の多い泥流になることもある(セント・ヘレンズ火山,磐梯山など)。このように初めから水を伴わない場合もあり,それらは大規模で被害も著しく大きい。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「火山泥流」の意味・わかりやすい解説

火山泥流
かざんでいりゅう
volcanic mudflow

火山体に堆積した土砂など多量の火山砕屑物と水が混ざって流下する現象。ラハール laharともいう。成因はさまざまで,火口湖での噴火や,噴火の熱による火口周辺の氷雪の融解などによる一次的なものと,噴火後の多量の降雨などによる二次的なものがある。大規模な場合は流下速度が時速 10km~数十kmと速く,広範囲が土砂で覆われる大災害になることが多い。1985年のコロンビアのネバドデルルイス山の噴火では,火砕流により山頂付近の氷河が融解して多量の火山泥流が発生,山頂から約 50km離れたアルメロを直撃し,住民約 2万5000人が犠牲となった。(→火山災害

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知恵蔵mini 「火山泥流」の解説

火山泥流

火山体に堆積した火山灰や土砂などが水と混ざり、一体となって流下する現象。「ラハール」とも呼ばれる。噴火に伴う火口湖の決壊や、噴出した蒸気の液化、噴火の熱による氷雪の融解、噴火後の多量の降雨などによって発生する。氷雪の融解によるものは、特に「融雪型火山泥流」といわれる。流下する速度は非常に速く、かなりの遠方にまで達する場合もある。

(2015-7-7)

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岩石学辞典 「火山泥流」の解説

火山泥流

ラハル

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