リカルドゥス(その他表記)Ricardus

改訂新版 世界大百科事典 「リカルドゥス」の意味・わかりやすい解説

リカルドゥス(サン・ビクトールの)
Ricardus
生没年:1110ころ-73

初期スコラ神学者,神秘思想家。フランス名はリシャールRichard。スコットランドに生まれ,パリサン・ビクトール修道院で,フーゴーの下にスコラの神学と偽ディオニュシウスの神秘主義とを結合する方法を学んだ。1162年以後同修道院長となる。《三位一体論》では経験に始まり理性による推論を経て神認識に至る道を述べ,次に《観想のための霊魂の準備》と《観想の恵み》においては,三一神の愛による発出と展開を還帰させて,同じく愛による霊魂の神への上昇を説いた。《大小ベニヤミン》と呼ばれるこの2著(ベニヤミンは天のはしごを登ったというヤコブ末子)は,のちの神秘主義の実践的綱領として用いられ,13世紀イタリアのボナベントゥラや14世紀フランスのJ.deジェルソンに,さらに16世紀の修道院改革にも大きな影響を与えた。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「リカルドゥス」の意味・わかりやすい解説

リカルドゥス[サン・ビクトル]
Richardus a St. Victore

[生]?
[没]1173.3.10. パリ
イギリス生れのスコラ神学者。パリのサン・ビクトル大修道院に入り,サン・ビクトルのフゴに学び,1162年師を継いで同副院長をつとめた。彼は弁証論を駆使して信仰真理に必然的論証を与えようとし,他面では神学を中心として感覚的知覚から神的観想における神との合一にいたる魂の6階梯を論じて神秘思想を深めた。ダンテは彼を「偉大な観想家」と評している (『神曲』天国編 X132) 。主著『三位一体論』 De trinitate,『観想の恩寵について』 De gratia contemplationis。

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世界大百科事典(旧版)内のリカルドゥスの言及

【サン・ビクトール学派】より

…パリ郊外のサン・ビクトールSt.Victor修道院(1113建立)に隠退して神秘神学の確立につとめたギヨーム・ド・シャンポーのもとに集まった人々,およびそこに形成された学統を総称する用語。フーゴーリカルドゥスらがその代表。この学派はたんに神秘主義を重んじただけでなく,哲学と神学の総合をめざしてこれにふさわしい神秘神学を構築したことで,12世紀の神学興隆の一翼をになった。…

※「リカルドゥス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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