リンパ節炎、転移性腫脹

六訂版 家庭医学大全科 「リンパ節炎、転移性腫脹」の解説

リンパ節炎、転移性腫脹
(のどの病気)

 頸部(けいぶ)リンパ節がはれる場合の多くは、炎症悪性腫瘍転移によるものです。通常はいずれも、はれたリンパ節に近い部位に原病巣があります。

 炎症では、歯性感染症(しせいかんせんしょう)や口のなかの(そう)感染、唾液腺炎(だえきせんえん)扁桃炎(へんとうえん)咽頭炎(いんとうえん)などに引き続いて生じることが多く、顎下部(がっかぶ)下顎の角近くの頸部リンパ節発熱、痛みを伴ってはれます。特殊なリンパ節炎である亜急性壊死性(あきゅうせいえしせい)リンパ節炎や伝染性単核球症(でんせんせいたんかくきゅうしょう)などでは、両側頸部リンパ節腫脹が多発することがあります。

 細菌性リンパ節炎では、感染のコントロールがうまくいかないとリンパ節腫脹がひどくなり、膿瘍化(のうようか)することがあります。膿瘍化すると、切開してうみを出す必要があります。

 近年、結核(けっかく)感染が増えつつあり、頸部にも結核性リンパ節炎がみられることがあります。皮膚が破れてうみが出た場合などには、二次感染に気をつけなければなりません。少しでも疑いがあれば、ツベルクリン検査や菌検査などを行い、早期に確定診断する必要があります。

 リンパ節腫脹で最も注意しなければならないのは、悪性腫瘍の転移によるものです。通常は、原発部の症状があってしばらくしてから転移が生じますが、上咽頭がんなどでは、頸部のリンパ節腫脹が初発症状のことがあります。炎症と同じように、原病巣にいちばん近い部位のリンパ節に最初の転移が生じるのが普通ですから、転移性リンパ節腫脹が疑われる場合には、口腔、咽頭、喉頭、食道唾液腺甲状腺などのがんに注意する必要があります。

 症例は少ないのですが、内臓から頸部のリンパ節に転移が生じる場合や、全身くまなく探しても原発部位が見つからない場合もあります。また、リンパ節に原発する悪性リンパ腫という腫瘍もあります。悪性腫瘍では、組織型から原発部位が推測されるため、細胞学的な検査も重要です。

 痛みや発熱など、炎症症状のないリンパ節腫脹があった場合は、腫瘍の可能性も考えて、急いで病院を受診しなければなりません。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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