リーブリ(読み)りーぶり(その他表記)Liivli

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リーブリ」の意味・わかりやすい解説

リーブリ
りーぶり
Liivli

ラトビア共和国のクールランド(クルゼメ)半島の先端部に住んでいる少数民族で、フィンランド語やエストニア語と同じ、ウラル系のバルト・フィン語に属する言語を使用している。リボニア人Livonianともよばれていた。今日リボニア語を話す人々は高齢化し、その数も一桁(けた)に近いとされているが、かつてはリガ湾からエストニアとロシアの国境にあるペイプス(チューダ)湖にかけての、いわゆるリボニア地方一帯に住み、『リボニアのヘンリク年代記』(1184~1227)には首領のカウポの名前も現れて活躍する。以後もその主力はリガの東南地方にあったが、しだいに現在の居住地域に移動を余儀なくされた。第二次世界大戦まではパテイクマ(オビシ)からクオルカ(コルカ)までの12村落に約1500人が、東西の方言をもとに「カラミエト(漁民)」「ラーンタリスト(沿岸民)」と自称して暮らしていた。砂地で海藻を肥料にする農業や後背地の森林での蜂蜜(はちみつ)採取なども行われてきたが、生業の中心は漁業で、帆船を操り種々の漁具を使って豊富な海の幸を手にしてきた。1920年代には文化協会が設立され、正書法や出版物、合唱団結成など民族文化の保護育成が活発になり、国旗制定も図られたが、戦争のために居住地が荒らされて四散した人々は、戦後戻っても体制による制約を受けて、そのことがいっそう周囲との同化を早めた。多くの特色ある民俗伝承や言語文化の研究も、主としてフィンランドやエストニアの研究者の手で報告されてきたが、ソ連解体後のラトビアではこれら同族の関係諸国と協力し、ふたたびリーブリ人の自治区問題と取り組んでいる。近年クールランドのイレ(マチルベ)村で夏ごとに行われてきたリボニア・フェスティバルには、リボニア語を話せない数千人の人々がその帰属意識を求めて参集するといわれている。

菊川 丞]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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