日本大百科全書(ニッポニカ) 「ルチア祭」の意味・わかりやすい解説
ルチア祭
るちあさい
目の守護聖女ルチアの日。ナポリ民謡でなじみ深いサンタ・ルチアSanta Luciaは、シチリア島の出身で、皇帝ディオクレティアヌス(245―313)によって、剣を首に突き刺されて殉教したといわれる。すでにダンテの『神曲』に聖女として現れ、中世後期の美術からは、自分の目をくりぬいて皿にのせ、密告した異教徒の婚約者に届けたという伝説が描かれた。このことから、ルチアは光を与えるものとして広く信仰されるようになった。ルチアの祭日は12月13日である。この日は1582年にグレゴリオ暦になるまでは、1年でいちばん昼の短い日、冬至にあたり、前夜は大みそかを意味した。そのため、各地では新年の吉凶、天候、結婚の占いなどをした。ノルウェーでは前夜、たくさんの亡霊が空を飛ぶ、というように、この夜は精霊、魔女が活動すると信じる所が多い。糸紡ぎをするのもタブーになっている。南チロル(北イタリア)では、ルチアが女の子に贈り物をするといい(男の子には聖ニコラスがする)、スウェーデンでは頭にろうそくの花冠をのせた少女が贈り物をする。バルカン半島から北欧に及ぶ地域では、眼病を治す聖女として崇拝される一方、冬至とかかわる古いゲルマン信仰のペルヒタとの習合も示している。ペルヒタは亡霊たちを導く女性で、贈り物をすると同時に容赦ない面も兼ね備えていた。ボヘミアのルチアが山羊(やぎ)の姿をしていたり、腹を引き裂くと子供を脅すのも、そのためである。
[飯豊道男]