気密性のある容器に食品を充填(じゅうてん)して密封し、レトルト(高圧釜(がま))で高温殺菌を行った製品。正確にはレトルトパウチ食品という。パウチとは密封する袋(容器)のことである。日本農林規格(JAS(ジャス))では「プラスチックフィルムもしくは金属箔(はく)またはこれらを多層にあわせたものを袋状その他の形状に成型した容器(気密性および遮光性を有するものに限る)に調製した食品を詰め、熱溶解により密封し、加圧加熱殺菌したもの」と定義している。加熱するだけで調理済みの食品が食べられ、現在ではカレー、ハヤシライス、ミートソース、シチュー、ハンバーグステーキ、ミートボール、米飯類、牛丼(ぎゅうどん)、善哉(ぜんざい)などがある。
レトルト食品の一般的特徴は、
(1)高温短時間で殺菌ができるため食品の品質の老化が少ない
(2)酸素、光線による食品の退色、酸化がない
(3)常温保存ができる
(4)袋のまま湯で温められる
(5)油性食品にも耐性がある
などである。
レトルトパウチ食品は1950年ごろ、アメリカで軍用に供するため缶詰にかわる加工食品として開発研究が始められたといわれている。日本では1960年代後半にレトルトのギョウザが販売されたのが始まりで、その後68年に発売されたレトルトカレーで一般化した。当時、3分間待てば食べられるという大々的な宣伝とともに、またたくまに一般家庭に浸透し、その後、シチューやミートボールなどにも拡大していった。
レトルト製品はアルミフォイルの使われているものであれば、2年間は保存できるとされている。また製品の袋または外箱には製造年月日、賞味期限が記載されているので目安にするとよい。室温で保存できるが、冷暗所が望ましい。
[田中伶子]
『日本缶詰協会レトルト食品部会編『レトルト食品を知る』(1996・丸善)』
レトルトパウチ食品の通称。レトルトとは,缶詰の殺菌に用いる高温加圧窯のことであるが,レトルト食品は,とくに金属缶の代りにアルミニウムを主体としたフレキシブルな袋を用いた高温殺菌食品をさす。もともとアメリカで宇宙食として開発されたものであるが,一般に市販されるように企業化されたのは日本においてで,1969年にフレキシブル袋にカレーを充てんし,高温殺菌し,缶詰と同じ保存性をもたせた製品が初めて発売された。80年には日本では生産量6万tに達し,95年には20万tを超えた。また海外でも製造が開始されている。レトルト食品開発の基礎となったのは,フレキシブル袋の開発であり,アルミニウム箔とプラスチックフィルムを3層にはり合わせたレトルトパウチフィルムが発明された。このフィルムは,ヒートシールと呼ばれる加熱溶封ができ,しかも缶詰と同じように高温加圧殺菌が可能である。レトルト食品には,カレー,シチュー,ミートソース,ハンバーグ,ミートボール,かま飯の素などの和風・洋風料理の素,スープ,中華風調味料,米飯,洋風・中華風料理,その他に分けられる。レトルト食品は缶詰より厚みが少ないので,加熱殺菌は缶詰より短時間(135℃,2~5分間)ですみ,それだけ栄養素の破壊が少ない。また食品に接する部分はプラスチックフィルムのため,品質の劣化も少ない。2~3年間は品質を損なうことなく保存が可能である。レトルト食品は単なる保存食としてでなく,内容がバラエティーに富むことから,インスタント食品としても多用されている。
執筆者:田島 真
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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…現在,日本はアメリカを除けば世界でも有数の缶詰生産国であり,輸出だけでなく国内消費も盛んである。 1969年には缶詰とほぼ同じ工程でつくられるレトルト食品が開発された。缶の代りにプラスチックフィルムやアルミ箔を容器にするもので,軽量で取り扱いやすいため最近消費が大きく伸びている。…
※「レトルト食品」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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