金属箔(読み)きんぞくはく(その他表記)metal leaf(foil)

改訂新版 世界大百科事典 「金属箔」の意味・わかりやすい解説

金属箔 (きんぞくはく)
metal leaf(foil)

金属を,その展延性を利用してごく薄い箔に伸ばしたもの。金属はめっきなどによってその表面に他の金属の薄い層をつけることができるが,木材などの非金属にも金属箔を用いることがある。金属箔と聞くと,銀紙金箔などを連想するが,現代の銀紙は多くの場合アルミニウム箔アルミフォイル)であり,ほんとうの銀ではない。アルミニウム箔の最も薄いものは5μmの厚さであり,工業的には板圧延機と同じ圧延機(たとえばワークロール径250mm程度の可逆式4段圧延機)を用い,前後から張力を付加し,潤滑に注意しつつ比較的高い圧延速度(数百m/min程度)で製造される。5μm程度の薄いものになると圧延での時間当りの生産量が小さくなるので,2枚合わせて圧延を行う。アルミニウム箔の両面光沢が異なるのはそのためで,鈍い光沢のほうが合せ面である。アルミニウム箔は金属箔のうちでも最も使用量が多いものであるが,食品・医薬品の防湿包装,料理用など,衛生上の問題と関係の深い分野で使用されるので,その圧延工場の防虫・防塵対策はきわめて徹底している。アルミニウム箔の強度は比較的低く,剛性も小さいので扱いやすく,手を切る危険がない。スズ箔や鉛箔もよく作られ,スズ箔はアルミニウム箔の普及する前は包装用によく用いられていた。これらの金属も強度や剛性が非常に小さいので紙のように扱うことができる。このような観点からいえば,金属箔と金属の極薄板とは区別しなければならないであろう。つまり,強度と剛性が大きい金属の極薄板は箔とは呼べないということになるからである。ステンレス鋼の18μmの薄板がカメラのフォーカルプレーンシャッターに利用されたりするが,これらの薄板は箔というより薄刃という感じで,取扱いに気をつけないとけがをしかねない。しかし,英語でfoilという場合には極薄板という寸法上の定義を与えておけばよさそうである。

 金属箔のうち最も薄くできるのは金箔で,0.3μmの厚さのものまで得ることができる。金箔に次いで薄くできるのは銀箔で,これは美術工芸品や銀糸などに使用されている。そのほかに,白金箔,アルミニウム青銅箔,洋箔(黄銅箔)などがある。
金箔
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「金属箔」の意味・わかりやすい解説

金属箔
きんぞくはく
metal foil

展延性に富む金属を薄紙状に打ち延ばしたもの。厚みの規格は各国により異なるが、だいたい0.2ミリメートル以下である。金属箔の歴史は非常に古く、たとえばエジプトツタンカーメンの金箔は1マイクロメートルの厚さのものであり、また箔打ち職人の姿がピラミッド内部の壁画にある。日本の金属箔の歴史は中国からの仏教伝来とほぼ同時期に始まる。近年では1919年(大正8)にスズ箔、鉛箔の長尺の巻取り圧延が可能となり、これらはおもに茶箱の内貼(うちば)り、たばこの包装に用いられた。1931年(昭和6)に初めて生産に成功したアルミ箔は、現在、食品・医薬品包装用、電気機器用、建材用、家庭用などに多量に用いられ、また値段が安いので、金属箔中最重要のものとなっている。スズ箔は約0.25マイクロメートルまで薄くでき、そのまま、または紙を貼(は)って、食品、薬品、フィルムなどの防湿用包装に用いられたが、近年、アルミ箔にその位置を譲った。アルミニウム青銅箔(12%以下のアルミニウムを含む)、洋箔(銅に8~20%の亜鉛を含む)は金箔の代用とされ、白金箔は電気抵抗体や高級装飾品に用いられる。最近、タングステン・カーバイドの作業ロールを使用した20段圧延機を使って、硬い金属であるステンレス鋼、チタン合金、ニッケル合金などの箔が製作され、その多くは電子機器などに使用される。

[志村宗昭]

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百科事典マイペディア 「金属箔」の意味・わかりやすい解説

金属箔【きんぞくはく】

展延性のよい金属を薄く打ちのばしたもの。最も薄くできるのは金箔,最も使用量の多いのはアルミニウム箔。金箔は厚さ0.0003mmのものまで得られる。銀は金に次いで展延性がよく厚さ0.0015mmまでの銀箔ができ,美術工芸品・銀糸などに使用。スズ箔は0.0025mm程度までのもの(いわゆる銀紙)ができ,そのままか紙にはって菓子・食品・薬品などの防湿包装に使用する。また金箔代用にアルミ金箔(アルミニウム青銅の箔),電気抵抗体や高級装飾品用に白金箔も使われる。

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