改訂新版 世界大百科事典 「レピドシレン」の意味・わかりやすい解説
レピドシレン
Lepidosiren paradoxa
肺魚亜綱レピドシレン科に属する淡水魚。南アメリカのアマゾン川流域,ラ・プラタ川上流のグラン・チャコ地方などの沼沢地にすむ。体は延長し,吻端(ふんたん)はまるい。うろこは小さく,体色は黒いが,暗いところでは色素細胞中のメラニン顆粒(かりゆう)が凝集するため淡色となる。胸びれはむち状,腹びれも同様であるが体のかなり後方にある。うきぶくろは左右2室に分かれる。全長1.5m程度。運動は緩慢で,腹びれを交互に動かして水底を蛇行する。草食性で,雨季の間に豊富な水草を十分に食い,筋肉組織の間に橙黄色の脂肪を多量に蓄え,乾季の絶食に備える。乾季に入ると泥の中に巧みに穴を掘って潜り,鰓孔(さいこう)を閉じてうきぶくろで空気呼吸をする。泥が乾固してくると,穴の口を閉じ,全身をまるめ粘液で体の表面をおおい,雨季になるまで休眠する。卵は水底におよそ1mの坑道を掘ってその奥に産みつけ,雄魚がここにとどまって保護する。この時期の雄魚の腹びれは肥大し,血管に富んだ5~6cmの糸状突起が密生する。孵化(ふか)した仔魚(しぎよ)には大きな外鰓(がいさい)がある。原住民は食用にする。
→肺魚
執筆者:日比谷 京
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報