改訂新版 世界大百科事典 「レーダー航法」の意味・わかりやすい解説
レーダー航法 (レーダーこうほう)
radar navigation
レーダーにより得られる情報を使って,船や飛行機などの移動体を安全に,かつ効率よく目的地まで移動させること。船で使用されているレーダーの表示方式は平面図表示plan position indication(略称PPI)で,この表示から得られる情報は,レーダー電波を反射する物標の極座標位置,物標の電波反射面のおおよその形状,その物標の電波反射強度などである。他の電波航法が固定局との位置関係情報のみであるのに比べ,情報の種類ならびに量において優れている。一方,視認情報に比べると情報の種類の点では劣っているが,特定情報(例えば物標の位置情報)については視界に制限されることもなく,精度もよい。またレーダーは外部からの援助がなくても情報を得ることができる。このようなレーダーの優れた点を航法に応用したのがレーダー航法であり,有視界航法と同様に自立航法である。レーダー航法のおもな目的は,自分の位置を求める(測位),物標との衝突を回避する(避航)ことである。測位についてはレーダー情報の中から,位置が固定で海図などに記載されている物標の映像を識別し,その物標の自分からの方位と距離を求めることにより,物標と自分との相対位置関係を知る方法がとられている。避航については,移動物標の映像を識別し,これを追尾することにより,移動物標の相対位置変化を捕らえ,ベクトル解析することにより移動物標の針路,速力を知る。一方,相対位置変化から,その物標が自分に異常に接近することが予想された場合,移動物標のベクトルと移動物標の相対位置に対して,自分のベクトルを変化(変針や変速)させた場合の相対位置変化の変動を予測し,安全に航行するための自分の行動を決定する方法がとられている。このようにレーダー情報を使って衝突回避を行うことをとくにレーダー避航法と呼ぶ。
→レーダー
執筆者:今津 隼馬
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報