日本大百科全書(ニッポニカ) 「レールム・ノバールム」の意味・わかりやすい解説
レールム・ノバールム
れーるむのばーるむ
Rerum Novarum ラテン語
1891年5月15日に教皇レオ13世が公布した労働者階級の状態に関する回勅。産業革命以後の資本主義の新時代に、労働と人間の関係、利潤、賃金、主人と召使いに関する従来の教義を適応させようとしている。回勅は、とくに資本主義の過当競争の支配がいかに労働者階級を孤立化させ、なんらの権利の擁護もないままに放置しているかを重視するとともに、当時の社会主義をも非難し、私有財産を人間の自然権と考え、単なる階級闘争によっては真に民衆の権利の確立も、さらに社会問題の解決も実現できない点を強調する。また、労働者階級に一家を養うに足りる適正賃金の保障を与え、国家が労働者を保護する義務を説いている。
[藤川 徹]
『R・オーベール著、上智大学中世思想研究所編訳『キリスト教史 第九巻』(1982・講談社)』