ドイツの政治家,ナチス党員。ロシア領レバル(現,エストニア共和国タリン)に生まれ,インド哲学や美学,さらにリガ,モスクワで建築学を学ぶ。1919年ミュンヘンに移住,著述家として活躍。21年以降,ナチスの機関紙《フェルキッシャー・ベオバハター》編集長。33年以降,同党外交部の指導者,34年からはナチスの世界観養成・普及の指導者の任にあたる。41-45年は東部占領地域担当の大臣に就任。46年10月ニュルンベルク国際裁判で死刑判決。主著に《20世紀の神話》(1930)がある。
本書は世界史のナチス的認識を広く世に知らせた書物で,〈ナチズムの聖典〉と呼ばれて日本(1938)をはじめ各国で翻訳紹介された。彼は世界史をユダヤ的伝統とアーリア的伝統の闘争史と位置づけ,アーリア人の優越性を力説した。また,本来はアーリア人の聖なる象徴であったイエス・キリストをユダヤ的なキリスト像に置き替えた元凶としてカトリック教会を指弾したため,その著作は禁書目録に載せられた。
執筆者:中村 幹雄+荒俣 宏
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ナチズムの理論家。エストニアの商人の子。リガ(現ラトビア共和国)の工科大学で建築を学んだが、モスクワでロシア革命を経験し、反ボリシェビズム的立場を強めた。1918年のドイツの敗北と革命に衝撃を受け、政治評論家となった。1919年ナチス党に入り、1921年以来党機関紙『フェルキッシャー・ベオバハター(民族的観察者)』の主筆として、ユダヤ主義、マルクス主義、民主主義を攻撃した。1933年に党の外交局長、1934年には党の世界観を統制する最高責任者となり、その世界観に基づいて東方進出を目ざし、イギリス、イタリアと提携しつつフランス、ポーランドと対立するという基本構想を主張したが、教条主義的態度のため、政策への影響力はほとんどなかった。主著『20世紀の神話』(1930)も反教会的な立場のため、党から公認されなかった。1940年文化財略奪部隊を組織し、1941年東方占領地相となった。ここでの責任を問われ、ニュルンベルク国際軍事裁判で絞首刑になった。
[吉田輝夫]
ドイツの歴史家、政治家。ベルリン大学で古代史と考古学を学び、学位取得後同大学の私講師となる。1918年11月ドイツ革命が勃発(ぼっぱつ)すると、独立社会民主党に入り、1920年その分裂とともに共産党に移った。1920~1924年ベルリン市会議員、1924~1928年国会議員。この間さらにドイツ共産党中央部、コミンテルン執行委員会で活躍した。1927年モスクワ従属路線を拒否して共産党から除名され、以後学究生活に戻り、1930年ベルリン大学古代史教授となるが、1933年ヒトラー政権が成立するとイギリスに亡命し、1938年アメリカに渡り、ブルックリン大学で教鞭(きょうべん)をとった。古代史家としてよりも現代史家として知られ、『ワイマール共和国成立史』(1928)は古典的名著とされている。
[吉田輝夫]
『ローゼンベルク著、吉田輝夫訳『ヴァイマル共和国史』(1964・思想社)』▽『ローゼンベルク著、足利末男訳『ヴァイマル共和国成立史』(1969・みすず書房)』
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1893~1946
ナチス・ドイツの理論家。ロシア革命を逃れドイツに亡命し,やがてナチ党に入党,1923年党機関紙『フェルキッシャー・ベオーバハター』の主筆となり,ナチズムの主要なイデオローグとして活動した。33年党の外交局長となり,34年以後は党のイデオロギーを統制する地位につき,41年東部占領地行政長官となった。戦後,ニュルンベルク国際軍事裁判で絞首刑に処せられた。主著『20世紀の神話』。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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…しかし25年に復刊し,当初はミュンヘンだけで発行されていたが,30年にはベルリンでも,38年にはオーストリア併合でウィーンでも発行するなど,ナチスの発展とともに伸長し,44年の最盛期には170万部に達したものの,45年ナチスの崩壊とともに消滅した。1923年から37年まで,ナチスの理論的指導者であったA.ローゼンベルクが主筆を務め,デマと宣伝で政敵を攻撃するなどナチズムの強力な宣伝媒体として機能した。その一方,J.ゲッベルスがベルリンで発行していたもう一つの党機関紙《アングリフDer Angriff》とは,つねに対立を続けた。…
※「ローゼンベルク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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