改訂新版 世界大百科事典 「ワグネルポット」の意味・わかりやすい解説
ワグネルポット
Wagner pot
ドイツの農芸化学者ワーグナーPaul Wagner(1843-1930)の創案になる実験用の植木鉢。白色磁製の円筒容器で,土壌を充てんした場合の土壌表面積が1/2000a(内径約25cm)および1/5000a(内径約16cm)になるように設計された2種類のものがある。1/2000aのものは底部側方に二つの孔があり,一方は栓の開閉により排水を調節し,他方はガラス管を装着するなどして,水位を調節する給水孔として利用する。1/5000aのものには排水孔のみがある。近年は同形で軽量のプラスチック製が普及している。ポット底部には半円筒形で鋸歯状の縁を有する磁製の集水管を置き,この上に礫(れき)および砂を敷いた後に土壌を充てんする。1/2000aのポットには10~15kgの土壌が入り,窒素,リン酸およびカリを,成分量で各1g与えるのが施肥の標準とされる。
ワグネルポットを使用する農作物試験は,一般にポット試験または植木鉢試験と呼ばれ,圃場試験や枠試験に対して,より精密な試験や実験を行う際に試みられる。すなわちポット試験では,行き届いた管理のもとに精選された植物を育てることができ,施肥量や灌水量を厳密に規定し,また必要に応じて気象室に搬入するなどして,それぞれの影響を調べることができる。ただしこの場合,農作物は限られた容器の土壌で孤立状態で生育することになるから,その結果を実地に適用するには十分の注意が必要とされる。
執筆者:山崎 耕宇
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報